42.

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42.

42. キョウコは、バトルが始まってもロイに交信し続けていた。 それは、武器に於いても、気力に於いても勝ち目が無いことをキョウコは察知していた。 今迄のロイの冷血かつ非情さが「ちがう世界」と「この世界」では違い… あとは、キョウコを愛したこと… 「ロイ!無理よ…」 「貴方には迷いがあり…」 「闘う気力が欠けているわ!」 「黙れ!キョウコ!」 「俺は、「ちがう世界」を支配したロイだ!」 「…「この世界」など俺にとって…」 そんなことをサイコキネシスで交信していた時… 涼の釘バットがヨウの頭部にヒットした! 意識がとんだのか? ヨウの青龍刀は空をきりながら、ふらふら歩き廻っていた… 「イヤー涼の奴…いいのくれちゃったね~」 ヨウは、余裕を見せてはいるが、頭部から出血が顔を伝わり… しきりに目を… ボロボロに破れたシャツを切り裂きハンカチとして滴り落ちる鮮血を拭っていた… 静まり返っていた観客が、鮮血を見た瞬間…「ウヮーッ」と歓声が上がり、会場は異常な熱気に包まれていた! ロイは、かなり劣勢である事が分かってきたらしい? ヨウの超人的な体力と鋼の身体 でなんとか耐え忍んでいた? しかしは、頭部は無防備であった。 ヨウは、涼の釘バットを頭部に喰らい意識がはっきりしないまま、ロイをかばい、ヨウは、ロイのいる場所に… しかし、劣勢であったロイに、ふとある事が思い出された… それは… 「ちがう世界」でヨウと出会ったあの時の事を… 俺達は、欲望、野心、制圧しか考えず、真直ぐに、ただ頂点を目指して…やって来た! そのために、犠牲になった奴らもいたが… 俺達は、そんな犠牲になった奴の事など考える暇がなかった。 サイコパスであり、自分が常に1番である事を… 俺サマ、ロイは神だからその考えがあった! その考えに共感したのがヨウである…が…ヨウは俺の舎弟的なそんざいでは無かった。 ヨウは、しっかり自分の主張を通す事から、俺と口論が絶えなかった! そんな時、ヨウはある抗争に巻き込まれ、身動き取れ無くなった事があり… 俺が身体を張ってヨウを守った事があった… 「ちがう世界」では、サイコキネシスから超音波を出し、脳を破壊する事が出来たのだった! 抗争から、ヨウを解放した時、俺達の絆が深まり…俺達は、「ちがう世界」を支配した。 ヨウと「ちがう世界」を支配したあの時の思いが腹の底から… 活力がよみがえり、パワーが湧気出てくるのを感じていた! 「もう、俺サマ、ロイ!は…迷いはない!」 「…「この世界」を暗黒の世界に…」 これでロイは、復活したのであろうか? 「ヨウ!心配させたな!」 「ゼィゼィ…ロイどうしたんだ?」 「どうしたんじゃねーよ!」 「何時もの俺だよ!」 ロイは、ヨウに笑顔を返した。 闘いも、長い時間となり、お互い上手く間が取れるようになっていた。 ヨウの頭部の出血を止めるため…ロイは重たい鎧を外し…上着をダガーナイフで切り裂き…包帯代わりとした。 「ロイ…ありがとう…」 「これなんだな、変な鎧は俺には、似合わないぜ!」 ロイは明らかに動きが軽く、嫌悪感からの苦しみから解放されたようだ? しかし…今迄の人の怨念、苦しみが… 「剛!ロイ、元気になっちまったな?」 「そうだね、涼!」 「レオがもう少しで何とかできたのに…」 「ロイの回復は、一時的なもの…何か奮起するものが…」 「今、「のん」から連絡が入ってた…」 「…「のん」は闘いを中止させるため…キョウコさんにコンタクトを取っていたんですが…」 剛は、闘いの怒号とうってかわり、穏やかな口調となっていた。 「…「のん」がキョウコさんは説得出来たんですが…ロイが拒否して…」 「…「のん」からの連絡で、今のロイの活力は一時的なもの…ヨウとの絆によるパワーなだけで簡単に、ロイの嫌悪感からくる苦しみは解放出来ない…」 「だから、ロイさんを嫌悪感から解放させるには…わたし「のん」が人質の方のマインドコントロールを解かないと…」 黄泉の国から「のん」がテレパシーを使って剛に交信して、「のん」の言葉で剛が涼、レオにロイの事を伝えていた。 「…「のん」ありがとう」 「うん、剛またね!」 「ロイ、あんたは、この青龍刀が良く似合うよ!」 「ホラょ…」 「おう!ありがとな!」 「ヨウ、ダガーナイフを渡すぜ!」 「ロイ、俺はこのダガーナイフが似合うんだ…」 「ヨウ、そうだな…ハッハッ…」 ロイとヨウは、久しぶりに笑顔をかわし笑い合った。 離れたところで、俺達とロイ達は休憩を取っていた。 観客の罵声が徐々に大きくなってきた! 「何だよこれ?」 「俺達の闘いは、お前らを楽しませる…為にやってるんじゃないぜえ?」 「でも、「この世界」のヤツは…何に喜びを感じているのかなぁ?」 「レオは、少し気分が悪いよ…殺し合いを観戦して…」 「闘わないと、ブーイングの罵声をかける…」 「…「この世界」にも愚かな…野蛮人が多いんだね?」 「レオ、そうなんだ、「この世界」の人間は、他人を気にする…奴らが多いんだ!」 「自分が無い、自分を大切にしない、自分を信じない…」 「レオは、「ちがう世界」から来たけど…わかるよなあ?」 「わかるよ!」 「…「ちがう世界」でも、同じようだったよ…だから…」 「国民がロイの言いなりになり…」 「ちがう世界」があんな風にかわり…」 「父さんが犠牲になったんだ!」 時間は、3時を過ぎようどしていた! 観客のブーイング、罵声がうるさいぐらいに響き渡る! 無責任な誰が大声を出し…観客を煽ったのだろう! 「ロイ!そろそろかな!」 「そうだな…闘うか?」 「レオ、やるか?」 「そうだね、涼!」 観客はどうでもいいのだが、バトルが再開された! 闘いが再度始まった… しかし、この闘いは、ただの殺し合いでは無くなっていた。 俺とヨウは、闘いを通じてお互い認め合うものを感じていた? 「ちがう世界」のヨウは、「この世界」の涼と? 剛は、「のん」との交信がまだ繋がっていた。 「剛、ヨウは、涼との闘いを通じて…お互い認めあってる見たいなの…」 「わかるわね?」 「うん、わかるよ…」 「それでね…剛、まだ…間に合うと思うの…」 「人質の方の、ロイさんからのマインドコントロールを取り去り…」 「ロイさんの嫌悪感の呪縛を解放してあげたいの」 「それで、ヨウが涼と闘った事で、お互いを認めあっているの」 「剛…「のん」ね、キョウコさんヨウさんがわかってくれたら…」 「こんな殺し合い…必要無いはずなのに…」 「なんとか…涼を通じて、ヨウさんが理解して、わかってもらいたいの?」 「ヨウの理解が在れば………?」 俺は、剛から「のん」との交信の内容を聴きワクワクしている自分がいた! それは、今、生死をかけて闘っている…ヨウに… 「剛!大丈夫だろうか?」 「大丈夫だと思うんですが…」 ヨウは、ロイとは違い肉親を殺めていない… だからヨウは… 「俺は、ヨウと渾身の力を振り絞り闘っていたが…」 俺は、ヨウを、多分ヨウも俺を、認め…殺し合いは避けたいと感じ取れた。 ヨウは、信頼を重んじていたからだ… ヨウは、父親、母親から思想、教育、行動など受け入れるものが全く無かった。 しかし、怨みをもち殺すなどの考えもなかったのだ。 ロイとの違いは、自分の欲求の為、人を殺害する事はヨウには無く。 ヨウの根底にある良心は、信頼である。 「ちがう世界」でストリートファイターとして、仲間たちと行動していた事を…ヨウは、大切にしていた。 しかし、ロイのダークな野望に憧れ加担し、「ちがう世界」を制圧した。 俺は、敵ではあるがヨウを認めていた。 それは、疲れもあるが、再開前はダガーナイフで急所を刺して来たのだが… 今は、致命傷にならない腕とか太腿ばかりを責めるようになった。 俺も無意識にヨウの頭部に釘バットを振り下ろさなくなっていた。 俺は、ヨウにこの闘いを辞められないか…どうしても伝えたかった! それは、ヨウを失いたくなかったからだ! 俺は、気を抜く事なく、闘いながらレオに、アイコンタクトした! すると、レオはそれを察して…テレパシーで俺に返してくれた。 「レオ、悪い…ロイと闘っていて大丈夫か?」 「うん!一時よりロイの威力はあるよ…でもまだ…」 「レオの斬鉄剣を恐れている感じだよ?」 「そうだな、ロイと闘っていて、交信が出来るんだからな」 「でも、殺し合いだから気は引き締めているよ!」 「…「のん」から剛へ交信メッセージ、レオにも入ってる?」 「わかっているよ…」 「それじゃあ…話しは早いなぁ」 「レオはこの闘いをして、優越を付けた必要があると思うか?」 「ロイは、この闘いちに勝って…「この世界」を制圧するつもり…なんだが…」 「ヨウは、ロイに従うが…」 「もう俺とヨウは、そんな事を超越していて…」 「わかっているよ、涼」 「レオも殺し合いは、したくないよ!」 「でも、ロイを許す訳にはいかないんだ…」 「レオは、ロイを殺すのでは無く、自ら…」 「わかった、レオ!」 「ロイが改心するしか…ないな?」 俺は、キョウコ、ヨウそして「のん」の協力を得て…ロイと「この世界」を将来を考えていた。 ここで、突然すざまじい勢で大粒の雨が降って来た! 「これは、たまらん」 誰かが呟いた。 冬の12月である事から、この雨は、俺達、ロイに取ってかなり、きついものとなった! 観客も慌てて、雨を避けられ場所に、移動している… 俺は、手が悴んで、武器を握る事が出来ない… 闘いを辞めて、立ち尽くしいた! 雨避けが無いため、雨を全身に浴び… 俺の付けている、カブトから雨水が滴り落ちている。 カブトが水を含んだせいか、かなり重くなり、下を向いて堪えていた! レオは、雨を直接浴びた事から、寒さで歯をカクカクさせている! 「レオ!これでは、身体を壊す…」 「あそこの木陰まで、走るぞ…いいか!」 「うん、わかった!」 ロイは、欠けたジュラルミンの盾を頭に置き、雨を凌いでいた! 「ヨウ!お前の頭だけなら、雨を凌げるぜ!」 「こいよ…わかった、ロイ」 「でも、身体がびしょ濡れだぜ!」 「ロイよ、涼達の逆の木陰に行こうぜ!」 「そうだな…ヨウ!」 突然の雨で闘いが小休止となったが?寒さが強くなり、雨が小雪に変わっていった。 このまま、この闘いが続くのか? 分からなくなって来たと俺は感じていた。
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