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「そんな民間療法のために村の子供を……!?」
想像を超えた悪行に折口は思わず絶句した。
「効果の有無は関係ない。病が治ると思えば誰だって高いお金を出す」
大事そうに千丈は薬包紙を懐へ戻す。
「頑固な炭爺すら余所者である私のいいなり。薬と引き換えに黙って窯で死体を焼いてくれたんで」
「花子と子供たちの命を奪った罪は、司法の元につぐなってもらうよ」
折口の手には武骨な軍用回転式拳銃が握られていた。
「おっとその手は食いませんや」
千丈は得意げに神器の人形を掲げる。
「拐かせ――深山幽谷の山男」
千丈の呪文と同時に折口はとっさに目を閉じた。
人形と目を合わせなければ、効果がないと判断したのだ。
「ちっ、手ごまのお嬢ちゃんのせいで弱点もばれていやしたか」
口ぶりとは裏腹に千丈の声は得意げだ、
「とはいえ逃げる時間を稼ぐには十分でさあ。姿が見えなくなるまでは、あっしを見ないでくださいね旦那」
「くっ、花子の仇をみすみす取り逃がすわけには……」
折口がぎりっと奥歯を噛みしめる。
「折口よ、お主はなかなか骨のある男じゃ。よって儂の神器を預ける」
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