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空と願い
長い時間を持て余す中で 空を眺めることが当たり前になった
雲が形を変えることに気づいたとき
世界の秘密を見つけたみたいで嬉しかった
だから雲のない日はとても長い
それでも次第にその秘密もありふれたものになってしまって
また空は眺めるものになった
それが変わり始めたのは あの日からだったと思う
また星が消えてしまった
星が消えることが当たり前になってしまったのは
私が空を眺め過ぎてしまったから
今の私は空を眺めることが退屈で仕方ない
朝と夜が何回繰り返されたかなんて もうどうでもよくなってしまった
そんな退屈な日々の中で 不思議な光景を見つけた
大きな城の中庭で人間が何かに祈りを捧げている
祈る先には何も見えないけれど
人間は見えているかのように手を合わせ願いを託していた
最初はその姿を見て 人間は弱い生き物なんだと思った
その願いが私からしたら 儚く可愛い願いだったから
そんな小さな願いを ただ託すことしか出来ない 祈ることしか出来ない
なんと可愛らしい生き物だろう
私が願いを叶えた理由なんていい加減だ
この弱い生き物の味方になって願いを叶えたら
何かが変わる気がしたからだ
けれど人間の願いを叶えても 空を眺める感情が変わることはなかった
その代わりに可愛らしい生き物は
いつの間にか怠惰で傲慢な生き物に変わってしまった
願うだけで何もしない
そればかりか願いが思いどりに叶わないと怒りを振りかざす
そんな生き物になってしまった
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