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運命と理不尽
最初はぎこちなかったと思う
一言二言の会話とは言えないようなもの
そこから次第に少女のために会話の種を探すくらいに
私の中でこの時間は育っていった
それから私が少女の隣にいても違和感がなくなり
いつの間にか私は 少女の瞳に映る自分とよく目が合うようになっていた
それからありふれた会話の中で私は少女に聞いたことがある
この城の人間が憎くないのかと
聞こえた少女の口から出た答えに 私は納得した
紅い瞳を持った自分は生かされているだけでありがたい
そう少女は笑って答えた
そして私の中で少女は他の人間とは違う部類になった
普通ならたくさんの愛情と笑顔の中で
光に包まれながら成長していくはずの存在
それなのに人間が少女に与えたものは 痛みや苦しみや孤独
それでもこの少女は 繰り返される終わりの見えない理不尽を
自分が原因だと疑わない
それどころか生かされていることに感謝をしている
なぜ人間はこんなに清い少女を傷つける
この少女はただ紅い瞳を持って生まれただけだ
誰かを傷つけたわけじゃない 何か罪を犯したわけじゃない
それなのに生まれた瞬間に存在を悪と決められ
こんな生き方をしなければならないのか
そんな運命も理不尽もくだらない
なによりそんなものに従っているこの少女に納得がいかない
運命も理不尽も抵抗したらいい
もっと大きな声で
願いががあるなら他の人間のように願ったらいい
もっともっと大きな声で
そんな思いを自分の中に見つけたとき 私は気づいた
私はこの少女に『助けて』と言われたいのだと
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