災難と不運

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災難と不運

少女が死んでから その城にはたくさんの災難や不運が起きた それが『守り神が離れたとき災難や不運が城を襲う』という おとぎ話が本当になったのだと信じる人間は少なかった それよりも『紅い瞳を持った子供の呪い』だと信じる人間が多かったのだ 自分たちの行いに心当たりがあるのも理由だろうが この人間の認識に私はしっかり自覚した 私の『おとぎ話』なんかより 『紅い瞳の子供』の方が城の人間の心の中にあったのだと そんなにも脆く危ういものならば 最初からおとぎ話なんてものなければよかった そうすれば少女の存在は人間として今もここにあったはずなのに そして 城での災難や不運は風のように その事実は”ウワサ”と言う名前に姿を変えて ”あの城は毒を飲まされた”と 城の外の人間の耳にも入るようになった 災難や不運を目に見えない何かに例えて 毒と表現した人間の想像力には感心する 城の人間にとって当たり前だったはずの 着飾ってたいた身なりや豊かな食事も それはまるで毒がゆっくりと全身に回るように いつの間にか目も当てられないほどになって まさしくその城は毒を呑んだかのように蝕まれていたのだから
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