同じ名前のわたしたち

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 ☆  ミンミンゼミが鳴り続ける。  わたしたち二人は、墓地に来ていた。それから一つの黒い墓石の前で、足を止める。墓石には、「三重家」と刻まれている。  「久しぶり、(れん)。会いに来たよ」  わたしたちは、墓石をかるく掃除し始めた。雑草をむしり、水分を含ませた新品のぞうきんで墓石を丁寧に拭く。  一条恋、二宮怜、そして三重蓮。わたしたち三人はとても仲が良かった。けれど、小学四年の頃、三人の家族で川へ遊びに行ったあの日、蓮は溺れて亡くなった。  わたしのせいだった。  わたしが、乗り気ではない蓮を深いところへ誘ったのだ。溺れる蓮に気づき、急いで助けを呼んだ。でも、間に合わなかった。  蓮が亡くなり、わたしは生きる気力を失った。死のう。わたしのせいなのだから、責任を取るのは自然なことだ。そう思っていた時、怜が口にした。  『蓮の分まで生きなよ。それが、蓮のためにできることだと思う』  勘づかれていた。わたしが死のうと考えていたこと。わたしは、その言葉にすがった。すがるしかなかった。生きていい理由を与えられて、わたしは今も生きながらえている。  それからは必死に生きているつもりだ。好きだった水彩画をやめて、勉学に励んでいる。けれど蓮は頭が良かったから、きっとまだ足りない。もっと頑張らないと。わたしはもっと優秀にならないといけないんだ。蓮の分まで。
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