同じ名前のわたしたち

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 ☆  翌日の十時を回った頃、三重家に足を踏み入れた。物置、というより倉だった。二階建ての建物を見て、そういえば蓮の家にはこんなものがあったな、と当時の思い出がフラッシュバックされる。かくれんぼ、ままごと、バドミントン、色々なことがあった。  「恋ちゃん」  声をかけられて振り返ると、玄関から蓮のお母さんが出てきた。どんな顔をして会話すればいいのか、わからない。わたしはお辞儀する。  「お久しぶりです」  「背、伸びたわね」  「……はい」  沈黙が流れる。しかし重たい空気に明るい声が割って入ってきた。怜だ。  「こんにちはー」  「こんにちは」  「怜も呼ばれていたんだ」  「まあね~。さっさと始めちゃおう」  「うん。というか、その格好で掃除するの?」  「あら、本当。穴あきズボンで大丈夫?」  「平気、平気。ってか、ダメージジーンズって呼んでほしいですー」  楽観的だなあ。けれど、怜のおかげで雰囲気は良くなった気がする。わたしたちは倉に入る。ほこりっぽい。  「あれ。これって……」  掃除をし始めて三十分ほど。二階にあった段ボール箱の中身を確認すると、懐かしい物を見つけた。  夏休みの宿題のドリル。当時に流行っていたキャラクターのフィギュア。サッカーボールの形をしたクッション。ほこりをかぶって劣化しているが、間違いない。どれも蓮の部屋にあった物だ。
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