夏祭り

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夏祭り

「山宮君お待たせ!」  待ち合わせの駅で山宮がぼんやりと待っていると今井の声が飛んできた。そちらを振り向いて口から「お」と声が漏れる。 「浴衣? 委員長、気合い入ってね?」  すると紅色の生地に金魚の柄が入った浴衣を着た彼女がはにかんだ。 「せっかくの夏祭りでしょ! あたしだってお洒落くらいしたいもん。山宮君は相変わらずマスクつけてて暑そうだなあ。でも水色のTシャツ、似合ってるよ」  髪はいつものポニーテールではなく、凝った編み方でだんごにし、垂れ下がった和風の髪飾りをつけている。今井が頭を少し揺らすだけでちりちりと小さな音がした。教室では見たことのない今井の女の子らしい一面に内心驚く。クラスでは男女問わず話せる朗らかイメージの強い彼女が、初めてのデートに照れたようにえへへと笑う。 「縁日は東口のほうだよ! 行ってみよう」 「だな」  委員長、すげえ夏っぽいな。  山宮はベージュのチノパンのポケットに手を突っ込み、石畳の道を歩き出した。
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