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SIDE B 2
彼が誤解していることはなんとなく気づいてた。そりゃそうだ。あんな場所であんな入院着着てるなんて、そうとしか思えないよね。
でも、あえてその誤解を解く気になれなかったのは、だからって何が変わるっていう荒んだ気持ちだったからかもしれない。夏が越せないのは祖母であって私じゃないんだよって、言う気になれなかった。素直になれなかった。祖母が亡くなってしまえばもうこの地を踏むこともないし、飛行機で地元に帰ってしまえばここで絆を作ってどうなるというのだろう。でも、それならなぜわたしはあんな説を彼に持ち出してみたんだろう。
あの三日間から数日たって容態が急変し、祖母は逝ってしまった。バタバタと葬儀のため父母がやってきていろんなことが終わって、わたしは今地元に戻っている。彼が挙げた三冊の本を揃えて、少しずつ読んでいる。もったいなくて一気には読みたくない。読んでいる間だけは、まだ繋がりが残ってる気がするから。
わたしは繋がりが欲しかったのかな、それとも欲しくなかったのかな。
あんな別れ方をしたらきっといつまでも覚えてくれるだろうとでも思ったのだろうか。
祖母が亡くなったあと、少し後悔して、やっぱりちゃんと彼にお別れをいいたくなってしばらくあの岬で待ってみたのだけど、彼は現れなかった。約束もしてないのだから仕方ないよね。わたしたちは何も交換せず名前すら教え合わず、ただ、お互いのとびきり大事な映画と本を教えあって、でもそれだけで相手のことをわかった気になって、そして。
そして。
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