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「『万年様』の問題も解決しそうだし、改めて今後のことを話しておきたい」
ろくに話したこともない相手の家というアウェーに来たせいか、徳紗はここまでほとんど声を出していない。借りてきた猫のようにおとなしかったが、ついにしびれを切らしたらしい。気づけば彼女のグラスだけが氷も含めて空っぽになっていた。
「あ、わるい。オレ、じゃましちゃってたな」
真山は頭をかきつつ、徳紗のグラスを片付け始めた。
「そろそろ締切まで半分を切るからね。時間はあんまり残ってないよ」
ここまで怜音もあまり意識していなかったが、最初にアキラと約束をしてからそろそろ1週間だ。撮影場所2ヶ所をロケハンした後は待機の時間が続いていた。『万年様』ができていなかったためだが、残り時間は確かに少ない。
「そうだったね……どうしよう」
「まず1番大事なのは、何と言っても今田くんだね。けど、大丈夫。調子が出てきた時の彼の集中力はケタ外れだよ」
「でも、本当にちゃんと調子が出るかな?」
徳紗は池の方を向いた。怜音もつられて目を向ける。
「すげえな、お前! めっちゃ絵上手いじゃん」
「こんなのいつも通り、なんだけど」
驚く真山に今田はわかりやすく得意気な顔をしている。確かに絶好調なようだ。
「だからさ、わたしたちもそろそろ始めないとダメだよね」
徳紗が話をこちらに戻した。彼女の目はまっすぐに怜音のことを見ていた。詳しいことは何もまだなにも聞いていないのに、無性に心臓が跳ねた。
「何を、始めるの?」
「撮影本番に入る」
徳紗の短い言葉に、怜音ののどがごくりと鳴った。
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