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順にクジを引いて、黒板に書かれた図へ名前を書いてゆく。
窓際に近かった亮介は、今度は廊下側の後ろの方だ。
ボクは一番後ろの、亮介とは反対側の窓際になった。
米倉さんはほぼ変わらない位置で、前の方の真ん中あたりだ。
「全員席が決まったね、では机を持って移動ー」
先生の号令で皆ガタゴトと移動する。
嬉しそうな子、残念そうな子、やっぱり色々だ。
ボクは一番後ろに机を置いて、席に着く。
あ、この席って、クラス全員の感情が見えちゃう席なんだ。
コトッと、ボクの隣に机が来る。
ボクの隣って誰だったっけ?
「これからよろしくね」
反射的に挨拶をして見上げる。隣の席になった女子の名札には『清音 らら』と書かれていた。
清音さんはボクを見ると真顔でほんの数ミリ頷いた。
そうだ。この子は『喋らない子』だ。
長くてまっすぐな髪を下の方で二つに括った清音さんは、とにかく他人と喋らなくて、クラスでは仲良しの子二人か先生以外と話してるところを見たことがない。
話す時も相手の近くでヒソヒソ話すので、ボクはまだ清音さんの声を聞いたことがない気がする。
けど、椅子に座った清音さんの周りにはふわふわと花が舞っていた。
顔はさっきと同じ真顔だったけど。
もしかして、ボクの挨拶が嬉しかったとか?
いや、後ろの席を狙ってて、それが叶って嬉しいって可能性もあるか。なんて考えているとボクの前にも机が来た。
ボクよりずっと背の高い男子、内藤君だ。
背は高くても肩幅が細いから、前は見えそうだなとボクは黒板を確認する。
内藤君は休み時間もずっと一人で本を読んでいて、他の子と話してるとこを見た事がないんだよね。紺色で細いフレームのメガネがなんだか大人っぽい。
「内藤君、よろしくね」
ボクがその背中に声をかけると内藤君から『!』が出た。
そんなに驚く事言ったっけ?
内藤君はボクを振り返ると、一瞬嬉しそうな線がパアアっと出て、それから何かを悩むような背景になった。
「……よろしく」
そっけない返事で、内藤君が前に向き直る。
でもその背中に嬉しそうな花が舞うのが、ボクには見えている。
内藤君もボクに挨拶されたの、嬉しかった……のかな?
隣を見れば、清音さんはまだほわほわと嬉しそうに花の名残を舞わせて、でも至って真顔で、ボクのことなんか視界に入ってないみたいに黒板を見ていた。
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