老紳士の午後

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宇宙空間が空一面に広がる。 あぁ、もう既に夜なんだ。 夜になればみんな寝てしまうのに。 僕だけは起きている。 空の彼方から夜を終える風景が 朝を連れてやってくる。 それは荘厳なるオルガンの音色が 深くけたたましく響き渡るかのように。 実直なまでに歩み続けた老紳士たちも その風景に目を奪われ、心の中で奇声を上げる。 朝に支配された現実と目と目が合って、 つかの間の享楽など、一瞬で過去のものになる。 眠れぬままに過ごした朝と、初めて聞いた老紳士たちの叫び。 朝ご飯を食べて髪をとかし、丸い光源が昇りゆく空を窓越しに眺める。 そうだ、仕事に行こう。 いつもの朝がやってきたのだ。 老紳士たちとすれ違いながら、通勤へと足が向かった。
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