公爵家嫡女 撫子〈15歳と10日〉

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私が正式に公爵家後継と決まったのは、6歳の時だというのに。 なんと14歳になるまで、婚約者が決まらなかった。 お父様は「あまりにもたくさんの釣り書きがくるから、選べないのだよ」と言ってくださってたけど。 きっと私を慰めるためだったんだわ。 公爵を継ぐのは私で。その配偶者でしかない立場になど。誰もなりたくなかったんだと思うわ。 我が公爵家は、皇国が興ってより続く由緒正しき家柄で。 国にたったふたつある公爵家のひとつで。 もうひとつの公爵家とは違い、数代おきに。皇女殿下のご降嫁や、皇子殿下への嫁入りがある家で。 通常なら、後継が決まった時点で、婚約者を決めたはずだった。 時間をかけて、我が家のことを勉強してもらわなければならないから。 だけど、婚約がまとまったのは去年。 それでデビュタントを1年遅らせたの。 同じ年の婚約者と、一緒に夜会へデビューするには。 ・・・時間が足りなかった。 婚約者は、この1年間で。公爵家にふさわしい立ち居振る舞いを。公爵領の歴史を。領地経営の諸々を。とにかく詰め込まれることになった。 あれで、音を上げないのだもの。確かにお父様は彼を見込んだのでしょうね。 ・・・私は不満だけれど。 執事がすっと、私の目の前のカップを。熱いお茶と取り換えてくれて。 ぼんやりとしていたんだ、と気づく。 考え込んだって、仕方がないわ。 もう決まったことなんだもの。自分にできることをしなくては。 「・・・そうだわ。 招待状はもう送ってしまっていたわね?」 通常、結婚式やその披露の夜会への招待状は、半年は前に送るものだわ。 日時変更のご連絡を。しなくてはならないわ。 私が執事へ確認すると、お父様とお母様が。もう婚約者の家と連名で、文章を認めていると仰る。 「後ほど、お嬢様のお部屋へお届けしますので、ご確認をお願いいたします」 ・・・確認はさせてもらえるのね。 議会の決定を聞いてすぐ、対応していない私が悪いのだけれど。 自分のことなのに、言葉を考えさせてはもらえなかった。となんだか悔しい。 デビュタントが済んだら、大人と認められるのだもの。もっとしっかりしなくてはいけないわ。 あ。そういえば・・・。 「お父様、挙式が延期なら。私のデビュタントも延期ですか?」 夜会へデビューした数日後に、挙式の予定だった。 そうすれば、未婚で出る夜会は1回で済む!美しい撫子に虫がついては大変だ!とか仰るのよ。有り得ないわ。お父様は本当に心配性で困ってしまう。 「はぁぁぁ」 お父様はまたも。なんとも説明できない表情で。 「夜会へのデビューは、変更できないと言ってきた。もう式次第も決まっているからと・・・。はぁぁ」 ? ふた月近くあるのに、変更できないなんて。珍しい話ね。招待された他国の方でもいらっしゃるのかしら。 「・・・この先の1年。どんなに厳選しても。 月に一度は夜会へ参加することになるだろうなぁ。はぁぁ」 いったい何がそんなに気になるのかしらと。お母様のほうを見るけれど。 お母様はにっこりするだけで。教えてはくださらない気みたい。 「お父様はご心配しすぎなのよ。撫子のことになるとどうしても、ね」 そうですね、それは。私もいいかげんよく知ってます。 ご友人がたのお父様とはぜんぜん!!違うもの。 いつだって、私のことを考えてくださる(お母様の次に、だけど)お父様。 私のお父様が、お父様で本当に良かったわ。
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