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私が正式に公爵家後継と決まったのは、6歳の時だというのに。
なんと14歳になるまで、婚約者が決まらなかった。
お父様は「あまりにもたくさんの釣り書きがくるから、選べないのだよ」と言ってくださってたけど。
きっと私を慰めるためだったんだわ。
公爵を継ぐのは私で。その配偶者でしかない立場になど。誰もなりたくなかったんだと思うわ。
我が公爵家は、皇国が興ってより続く由緒正しき家柄で。
国にたったふたつある公爵家のひとつで。
もうひとつの公爵家とは違い、数代おきに。皇女殿下のご降嫁や、皇子殿下への嫁入りがある家で。
通常なら、後継が決まった時点で、婚約者を決めたはずだった。
時間をかけて、我が家のことを勉強してもらわなければならないから。
だけど、婚約がまとまったのは去年。
それでデビュタントを1年遅らせたの。
同じ年の婚約者と、一緒に夜会へデビューするには。
・・・時間が足りなかった。
婚約者は、この1年間で。公爵家にふさわしい立ち居振る舞いを。公爵領の歴史を。領地経営の諸々を。とにかく詰め込まれることになった。
あれで、音を上げないのだもの。確かにお父様は彼を見込んだのでしょうね。
・・・私は不満だけれど。
執事がすっと、私の目の前のカップを。熱いお茶と取り換えてくれて。
ぼんやりとしていたんだ、と気づく。
考え込んだって、仕方がないわ。
もう決まったことなんだもの。自分にできることをしなくては。
「・・・そうだわ。
招待状はもう送ってしまっていたわね?」
通常、結婚式やその披露の夜会への招待状は、半年は前に送るものだわ。
日時変更のご連絡を。しなくてはならないわ。
私が執事へ確認すると、お父様とお母様が。もう婚約者の家と連名で、文章を認めていると仰る。
「後ほど、お嬢様のお部屋へお届けしますので、ご確認をお願いいたします」
・・・確認はさせてもらえるのね。
議会の決定を聞いてすぐ、対応していない私が悪いのだけれど。
自分のことなのに、言葉を考えさせてはもらえなかった。となんだか悔しい。
デビュタントが済んだら、大人と認められるのだもの。もっとしっかりしなくてはいけないわ。
あ。そういえば・・・。
「お父様、挙式が延期なら。私のデビュタントも延期ですか?」
夜会へデビューした数日後に、挙式の予定だった。
そうすれば、未婚で出る夜会は1回で済む!美しい撫子に虫がついては大変だ!とか仰るのよ。有り得ないわ。お父様は本当に心配性で困ってしまう。
「はぁぁぁ」
お父様はまたも。なんとも説明できない表情で。
「夜会へのデビューは、変更できないと言ってきた。もう式次第も決まっているからと・・・。はぁぁ」
?
ふた月近くあるのに、変更できないなんて。珍しい話ね。招待された他国の方でもいらっしゃるのかしら。
「・・・この先の1年。どんなに厳選しても。
月に一度は夜会へ参加することになるだろうなぁ。はぁぁ」
いったい何がそんなに気になるのかしらと。お母様のほうを見るけれど。
お母様はにっこりするだけで。教えてはくださらない気みたい。
「お父様はご心配しすぎなのよ。撫子のことになるとどうしても、ね」
そうですね、それは。私もいいかげんよく知ってます。
ご友人がたのお父様とはぜんぜん!!違うもの。
いつだって、私のことを考えてくださる(お母様の次に、だけど)お父様。
私のお父様が、お父様で本当に良かったわ。
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