夏恋が降る丘に

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「好きだ」 何故か、学校の玄関。それも事務室の真ん前で いきなりそう言って目の前に佇む彼。 中学3年生夏休み前の、梅雨が明けたばかりの蒸し暑い放課後に ただでさえ暑いのに、さらに気温が上がった様に感じている私は 突然の告白に戸惑っているから、 それとも、彼の事が気になっていたからなのか。 「あの……」 とりあえず、場所を変えようと提案する。 歩きながら考える。 さっきまでは幼馴染みでいつもちょっかい出してくる奴。 長い髪をポニーテールにしていると必ず引っ張ってくる奴。 変なあだ名を付けてニヤニヤしてる奴。 彼の今までの所業を思い浮かべる。 「ねぇ、好きって、どういう事?」 どうにも分からず思わず聞いてみれば 「こういう事」 いきなり手を引かれて、その胸の中に収まってしまう。 そんなに背丈が変わらないのに いつの間にか、少し低くなった声と、大きな手。 いきなりの事で動けずにいるせいで 彼の心臓がありえないくらい、早鐘を打っているのが胸に当たる耳から感じ取れて 思わず彼の顔を見つめれば いつもと違う真剣な眼差し。
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