夏恋が降る丘に

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「いや、でも……いきなりだし……」 そう言って何とか腕の中から脱出して そそくさと下駄箱へ向かって、帰宅の準備をするけれど 「返事待ってるから」 逃げられそうにもない。 「ねぇ、どうして好きだって思うの?」 だっていつも意地悪ばっかで。本気で嫌われてるって思ってた。 素直にそう伝えてみれば 「何か、好きすぎて、君が可愛すぎて。何とか振り向かせたくて、そうなってた」 それから真っ直ぐに見つめられて 「ごめん、嫌だったよな」 素直に謝ってきて。 戸惑いと、今までの関係が崩れてしまうかもしれないと不安で 思わず涙目になると 「あぁ、ダメだ。全部、可愛すぎる」 彼の頭の中は大丈夫だろうか、今までは散々からかって楽しんでいたはずなのに。 「頼むから、その目でこっちみないで、理性が効かなくなる。」 甘さ全開の言葉たちが、俯いた頭上から降ってくる 声がすぐ側でするって事は、きっと顔を上げれば彼と至近距離で見つめ合う事になるのが想像できて。 「バイバイ、また明日」 そう言ってこの場から早く逃げ出したい気分。 追いかけられると、逃げたくなる 何だそれはと思ってたけど、いまなら分かる。
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