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「分かった、でも少し考えたいから」
俯いたままそう言ってその場を何とか離れた。
今は夏休み只中。
暦の上ではもう直ぐ立秋で、今年の夏ももう直ぐ終わり。
少しだけ寂しげなヒグラシの鳴き声を聞きながら、
丘の上の公園のベンチに座り、沈みつつある夕陽を眺めていて
空は美しいグラデーションを描き、この上なく切なさが胸を締め付ける。
ここは、幼い彼とよく遊んだ公園で……
「やっと、見つけた」
聞きたくて聞きたくなかった声が、頭上から降ってきて。
振り返る事ができないまま時間だけが過ぎていく。
夏の終わりが近づいている、そう思うと、何故か焦燥感ばかりが空回りながら。
ずっとずっと考えていた。
私と彼の関係も時の流れと共に、変わっていってしまうのが怖くて。
それでもやっぱり……。
日が落ちて幻想的なマジックアワーに包まれながら
振り返って、彼の瞳を見つめれば、とても優しくて、温かい気持ちが溢れてくる
「……好き……」
その溢れる何かは、言葉になって唇をすり抜ける。
心がキュッと締め付けられるような、甘い感覚が
体の奥で弾けそうになりながら。
泣きたくなる程、本当は会いたかった。
おずおずと彼の手に触れて、視線を交わしてそう呟けば
「オレも……」
そう言って、優しく抱き寄せられて……。
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