7人が本棚に入れています
本棚に追加
「好きだ」
何故か、学校の玄関。それも事務室の真ん前で
いきなりそう言って目の前に佇む彼。
中学3年生夏休み前の、梅雨が明けたばかりの蒸し暑い放課後に
ただでさえ暑いのに、さらに気温が上がった様に感じている私は
突然の告白に戸惑っているから、
それとも、彼の事が気になっていたからなのか。
「あの……」
とりあえず、場所を変えようと提案する。
歩きながら考える。
さっきまでは幼馴染みでいつもちょっかい出してくる奴。
長い髪をポニーテールにしていると必ず引っ張ってくる奴。
変なあだ名を付けてニヤニヤしてる奴。
彼の今までの所業を思い浮かべる。
「ねぇ、好きって、どういう事?」
どうにも分からず思わず聞いてみれば
「こういう事」
いきなり手を引かれて、その胸の中に収まってしまう。
そんなに背丈が変わらないのに
いつの間にか、少し低くなった声と、大きな手。
いきなりの事で動けずにいるせいで
彼の心臓がありえないくらい、早鐘を打っているのが胸に当たる耳から感じ取れて
思わず彼の顔を見つめれば
いつもと違う真剣な眼差し。
最初のコメントを投稿しよう!