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火星への降下
マルス2の火星降下シーケンスが、リサの作成した自立制御則を使って始まる。もちろんその火星降下の状況は約十分遅れて、地球で観測できることになる。そしてリサの作成した制御則はマルス2の状況を人工音声で伝える機能も持っていた。
『オールシステムはGOよ。それではマルス2、火星降下シーケンスに移行する。自立制御則起動。これ以降は全て自立制御則の制御に委ねるわ。恐怖の八分を乗り越えて火星着陸の成功を祈っている。神のご加護を』
フライトダイレクターのエリーの声が管制センターに響く。
私はその声をリサの病室にセットした大型モニターを介して聴いていた。約二十分後、地球と火星を往復して来た無線からマルス2の人工音声が聴こえて来た。この時、実際のマルス2の着陸シーケンスは終わっている筈だけど、地球でそれを伺い知ることは出来ない。
『マルス2、自立制御立上げ完了。それでは軌道離脱減速に入ります、三、二、一、マーク』
その人工音声はリサの声だった。思わずベッドに横たわっている彼女を見た。
「本当に貴女の分身が火星着陸を行うのね……」
また涙が溢れて来る。
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