火星への想い

火星への降下

『六分十秒、水平位置修正完了。エターナルクレパス進入。ライダーセンサー起動。底部貫通孔を確認』
　機体がクレパス内へ降下していく。ＬＥＤライトに照らされたクレパスの氷が虹色に輝いている。

『七分十秒、クレパス底部最終減速。貫通孔へ進入、五十、百、百五十メートル。貫通孔通過、地下空洞へ』
　リサの制御でマルスは直径五十メートルの貫通孔を抜けた。

『七分三十秒、地底湖確認。着地面無し。着水シーケンスへ切り替え』
　機体のカメラがＬＥＤライトに照らされた広大な地底湖を映し出した。

「リサ、もう少しよ」
　私は目を瞑っているリサに声を掛けた。

『七分五十五秒、フロート展開(デプロイ)。三、二、一、ＭＥＣＯ(メインエンジン停止)。着水成功！　やったわ！』
　マルス２(リサ)の喜びの声が聴こえる。

『マリー、成功よ！』
　管制センターに居るフライトダイレクターのエリーの声が響いて来た。

「ええ、分かっているわ……凄いね……。やったわ、リサ」
　私の見つめる画面にはＬＥＤライトに輝く火星の地底湖が綺麗に映されていた。