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私は飯田課長が崩れ落ちないように体を支えた。
顔色も青白く調子悪そうに見えたので、心配そうに見ていた隣の男性社員には「お手洗いに行ってきますね」と断ってその場を離れた。
体を支えながらゆっくりと歩をすすめ部屋を出ると、飯田課長はホッと息をついた。顔色も先ほどより随分良くなっている。
「課長、ご気分どうですか?」
「ありがとう、大丈夫」
「お手洗いではなく外の空気を吸いに行きましょう」
「ごめんなさいね、私、酔うと足にくるみたいで」
「大丈夫です、私が支えますから」
外に出てそこにあったベンチへ座る。
飯田課長は目を閉じ大きく息を吸った。長い黒髪が風になびいていた。
「すみません、課長に無理に飲ませたの同期なんです、悪い子じゃないんですけど調子に乗るところあって」
課長は私の方を向く。しっかりと目が合ったため私は恥ずかしさでいたたまれなくなるが逸らすことも出来なかった。
課長はフッと優しく微笑んだ。
「山本さん、もう戻って。私は大丈夫だから」
いやだ、咄嗟に思った。もう少し一緒にいたいと。
「もう帰られるんですか? 課長、荷物は?」
「あっ、忘れてきちゃったな」
「私、取ってきます。その前にタクシー呼びますね」
スマホでタクシーを頼んだ後、店内に戻って課長の荷物と自分の荷物を取って戻ると、ちょうど良くタクシーがやってきた。
「歩けますか?」
「大丈夫よ、いろいろありがとう。お礼は後日するから」
「いえ、私も帰るつもりですから、送ります」
「そんな、悪いわよ。戻ってちょうだい」
「課長、立ってみてください」
課長は立ちあがろうとするが、やっぱり力が入らない。
「私に助けさせてください」
そう言って課長に手を差し伸べると、躊躇いつつもしっかりと手を握ってくれた。
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