123人が本棚に入れています
本棚に追加
なんで? どうしてこうなってるの?
隣にいる彼女の寝顔を見つめる。
可愛い人は寝顔も可愛いんだなぁ。
さて、どうするか。
私の危機管理能力が問われているかのようだわ。いや、笑い事じゃなくてね。
もう一度、彼女の寝顔を見る。
私の気持ちには、気付いてしまっていた。
数時間前の出来事を思い出すだけで心臓が踊りだし、火を吹いたように顔が熱くなるのだから。
あんな事が起こるなんて思ってもみなかったけれど、いやもしかしたら少しは期待していたのかもしれない。
1番の驚きは、キスがあんなに気持ち良いものなのだという事実。
私の気持ちはさておき、彼女の事を1番に考えるべきなのは当然のこと。そうなると自ずと答えは出る。
なかったことにする。
それがお互いの負担にもならない筈。今後も今まで通りの上司と部下の関係を保てば良い。そうすれば、いずれ彼女は素敵な人と出会うだろうし、仕事も出来るから出世もするかもしれない。うん、それが良い。
昨夜私は酔って彼女に送ってもらい、そのまま泊まってもらった。その設定でいく。何かを聞かれたら覚えていないと答えればいい。
朝食を作り、彼女を起こし一緒に食べる。美味しいと言って食べてくれる姿が微笑ましくて、つい欲が出る。
少しでも一緒にいたくてもう少しこの幸せな時間を味わいたくて、コーヒーを淹れたり駅まで送ろうと言ってみたり。
こんなに諦めが悪い人間だったなんて、情けない。
彼女が出て行って玄関がパタンと閉まる。
途端に体から熱が引いていくのがわかる。寂しい、こんな感情いつ以来だろう。
彼女の直属の上司ではないから、これでもう職場でも気軽に話しかけるなんて出来ないし。
いやいや、これでいいんだ。彼女の将来を考えればこれがベストな選択だ。
自分でそう決めたんでしょうが。
その週末はずっと、ゆらゆらと揺れ動いていた。
最初のコメントを投稿しよう!