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アクマの存在
俺はスマホに目をやると、着信履歴を確認した。
何度スクロールして探しても、姉からの着信がない。
俺はひどく混乱した。間違って消してしまったのかと自分を疑ったが、ここ最近の姉からの着信と折り返しの発信履歴、送ったメールが消えているのだ。
電話帳から姉の番号に電話をかけた。
呼び出し音が鳴り、3コール目で姉が出た。
『紘一? 朝からどうしたの〜? 久しぶりじゃない?』
陽気な姉の声が聞こえる。
俺は震えそうになる声を必死に堪えた。
「姉さん…旦那さんの親戚の子はどうなった?」
『はぁ? 何、誰のこと? 何かあったっけ?』
ダメだ…手が震える。俺はギュッと目を閉じた。
「いや、何でもない。ごめん、寝ぼけてたかも」
姉が電話の向こうで豪快に笑う。俺は麻里奈との結婚の話を伝えて、電話を切った。
――俺は「姉じゃない誰か」と話していたのか?
そもそも、アクマは…存在していなかったのか?
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