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天使の誕生
――ある日の午後、俺はソワソワと病院の廊下を行ったり来たりしていた。
こんなに自分が小心者だったかと思うほど、心が落ち着かず、神に願った言葉は百を超えただろう。
――オギャア! オギャア!
ハッとして、麻里奈がいる分娩室の扉が開くのを今か今かと待ちわびた。
看護師に呼ばれ、疲労感は見えるものの、やりきった顔の麻里奈と対面する。
「ありがとう、麻里奈。頑張ったな…」
「女の子だって。…見て、可愛い印が付いてるよ」
小さくシワくちゃな左手を麻里奈が優しく掴むと、手首に星の形をした痣が見えた。
心の中に閉まった記憶が蘇る。
――あの子と一緒だ。
側にいた看護師がにこやかに「徐々に薄くなると思いますよ」と言ったが、消えて欲しいとは全く思わなかった。
もう一度、神様に感謝を伝えた。そして、どこかへ消えたあの子にも。
――ありがとう、また会えたね。
〜 終わり、そして続く…? 〜
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