妖魔の章 二話

2/7
前へ
/19ページ
次へ
「そうですね。 今はその言葉を信じて前に進みましょう。 ね、ラミィさん」 「ええ、そうね。 希望がそれしか無いんだってんなら、乗っかってやるわよ。 その、微かな希望に。 そうしなきゃリアに、ロゼに、ソーマに会えないってんなら尚更ね!」 (ソーマ……? そうか、二人はそれぞれ別の世界の住民なのか。 どうりで……)  ようやく二人の話の噛み合わなさに合点がいった明日汰は、気を取り直して空を見上げる。  見上げた先には浮遊遺跡。  明日汰はそれを眺めながら、二人に──── 「よし、じゃあ今から俺達はチームだ。 これからはお互い協力し合って、この世界からの脱出を目指すぞ! これからよろしくな、ラミィ、セシル!」 「はい! よろしくお願いします、アスタさん!」 「へいへーい、よろー」  セシルが語るには、あの浮遊遺跡の正式名称は、菜園城ベジタリオスというらしい。  実にわかりやすい名称だ。  名が体を表している。 「ラミィの故郷には、あれと似たようなのはあるか?」 「あるわけないでしょ、あんなけったいな物。 あったらとっくに言ってるわよ」 (となると、あの浮遊遺跡。 ベジタリオスは間違いなく、アーベルジュにのみ存在する建造物。 特異点、だろう。 なら……) 「よし……じゃあ彼処に行こうか、二人とも。 どうやらここを突破するには彼処に行かなきゃならないみたいだ」  その言葉にラミィが、こいつ何言ってんの、とでも言いたげな表情を浮かべた後。 「ばっかじゃないの、あんた! 彼処には天空野菜が沢山居るのよ!? そんなとこ行くなんて、自殺行為じゃない!」 「私もラミィさんと同意見です! ユキトさんやリンネさん、S級冒険者の方々と一緒ならまだしも、セシル達三人じゃ死にに行くようなもんですよ!」 「いやまあそうなんだけどさ。 それでも行かないとどうしようも無いって言うか」  尚も引き下がらない明日汰に二人は呆れから、深く溜め息を吐いた。    
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加