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「だって最初、アスタさん言ってたじゃないですか。 頑なに、ベジタリオスを目指すって。 ベジタリオスが特異点だからって。 ですよね、アスタさん」
「セシル、君なかなか賢いな。 大正解だ」
正解を自ら導き出したセシルは大層ご満悦の様子。
しかし、そこからの話は秀才なセシルにも理解不能な話ばかりだった。
「じゃあ何故君が居た世界の建築物が特異点としてレヴナントに現れているのか、これはわかるか?」
「そういえばどうしてベジタリオスが……セシルの世界にしかないような建造物が、特異点としてこの世界に…………ううん、それだけじゃない。 そもそもどうして別の世界の筈なのに、風景その物はアーベルジュの物なんでしょう……」
それこそが、セシルがこの世界をアーベルジュだと勘違いした要因である。
なにしろここは……この世界のシステムは……。
「これは俺達が実際に経験した上での結論なんだけどな。 実はこの世界、俺達の記憶を反映して、様々なエリアを生み出しているみたいなんだよ。 だからアーベルジュにしかないであろうベジタリオスがこの世界にも出現してる、って事だと思う」
「「……!」」
この世界は、自分達の記憶を元にして風景を作り出す。
そんな荒唐無稽な話に二人は目を見開き、驚きを露にする。
「あ、あり得ません! 記憶を元に世界を作るだなんてバカげてます! そんな事が出来る筈が……!」
だが、セシルは信じるしかなかった。
常に漂い、停滞する筈のない遺跡、ベジタリオス。
空に浮かぶ数多の惑星。
ラミィの持つ神の恩恵や明日汰の妖力といった、アーベルジュには無い異質な力。
これだけ自分の常識ではあり得ない現象ばかりが起きているのだ。
否定のしようがあるわけもなく……。
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