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「気分はどう?なんか、学校の中はうわさとかデマとかすごいことになってるよ。あなたを発見した私が女バスだっただけなのに、女バスの子が倒れたとか。あとは……、なんか五年の神坂くん?その子がカッターナイフを持ってて、犯人じゃないかって言われてたり」
「えっ?!」
「あれ、知ってる子?……あ、同じクラスか」
「海斗は犯人じゃないです……!」
「そっか、そうだよね。なんか、その子の机に入れてあったカッターナイフがまるで演出みたいにみんなの前で落ちたんだって。犯人だったらもっと慎重に隠しとくよねぇ。それにカッターナイフでバスケットボール切り裂くのなんて、簡単じゃないよ?」
確かに、湯田先生はもっと鋭いナイフを使っていた。
湯田先生が海斗を犯人にしようとしている……?
あたしはいてもたってもいられず、起き上がった。
「ちょっと、急に動いたら危ないよ!」
佐藤さんが慌てて止める。
「もう、大丈夫です。私、行かなきゃ……!」
「どこに?」
「海斗のところに!」
必死で言うと、佐藤さんはにっこり笑った。
「友達なんだね」
でもその後すぐに真剣な顔になって、声を低くした。
「担任に放課後、相談室に呼ばれたって聞いたよ。まだそこにいるかも。行ってみたら?」
「ありがとうございます!」
あたしはいてもたってもいられず、教えてもらった相談室に向かって駆け出した。
身体の痛みとふらつきで、相談室にたどり着くとドアの横の壁にへたり込んでしまった。
必死で呼吸を整える。
相談室の中から微かな話し声が聞こえてきた。
「僕はやっていません」
海斗の声が聞こえた。
「そうだよねぇ。このカッターは君の?」
「違います。誰かが僕の机に入れたとしか思えません」
「君がやったと誰かが思わせたかったのかもね。神坂君、誰かに恨まれたりしてない?」
「さぁ…。特に誰とも関わってないんで、わかりません」
「なるほどね……」
もっと様子を知ろうとドアに張り付くけれど、声がくぐもって聞こえづらい。
「君の主張はわかった。まぁ、今日のところはもう帰りなさい。……外で君を待ってる子もいることだしね」
「え?」
いきなりドアが開いてあたしは部屋の中に転がり込みそうになる。
海斗の驚いた顔と、こちらを見下ろす湯田先生が見えた。
湯田先生の頬には大きな絆創膏が貼ってある。
その下には今朝あたしがつけた引っ掻き傷があるはずだ。
「待たせたね。帰っていいよ」
肩に湯田先生の手が触れた瞬間、あたしの脳裏に
またあの映像が過ぎる。
恐怖が全身を駆け抜けて、あたしは目をつぶった。
「どうした?」
海斗が顔を覗き込んでくれる。
「思い出したの……」
「何を?」
思い出すと、またあの場面がフラッシュバックしそうになる。
「こわい……!」
思わず海斗の腕にしがみついた。
「海斗、気をつけて……!」
聞かれても理由を言えない美雨の背中を、海斗は落ち着くまでさすっていてくれた。
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