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貸し借り(1) (7月11日)
「ねえ、お金、借りられないかな? ちょっとでもいい。50ペソでもいい。」
いつになく真剣に、ホセマリアが言ってきたのは今にも雨が降りそうな木曜日の午後だった。
そのときグリセルダは、おばけはちみつの「掃除できてる方の」片隅で、塗装のはがれた壁にもたれてスマホでピクシブの新作投稿イラストを眺めていた。そばでは、ジュリコがカーペットの上に、優雅な上品な猫みたいに寝そべって、ファション系の雑誌を、それほど面白くもなさそうに読み流している。
「なによ? 女子たちの気だるい良い感じの読書タイムをぶちこわして飛びこんできたかと思ったら。いきなりお金かせとか? あんたそれ、何に使うのよ?」
ジュリコが、言ってる言葉ほどにはキツくない、何だかどうでもよさそうな口調で言い、ちらりとホセマリアに視線を流す。
「えっと。その。病院、行く、お金がさ。足りなくて」
言いにくそうに、ホセマリアがつぶやいた。必死でここまで走ってきたのだろう―― なんだかむやみに息を切らせて、ほこりっぽいネイビーカラーのTシャツの袖で顔の汗をぬぐったホセマリア。そのあとメインの入り口から少し入ったところにたたずだまま、少し気まずそうに視線を床に落とした。
「何? 具合悪いの? どうしたの?」
グリセルダはタブレットをスリープし、しずかに床の上に置いた。
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