おばけはちみつのグリセルダ

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虹の根(3) 「ねえ、ちょっとまた休憩、いいかな…?」  ようやく、その、さっきスマホで見ていた「舗装道路」に実際出たところで。グリセルダは言って、道端の白い石の上にどさっと座った。 「なによグリセルダ、あんたさっきもそう言って休憩したばかりじゃない?」  …などと不平を口では言いながら。ジュリコもさっそくグリセルダの隣に座り、肩にかけたバッグの中からリンゴ味のシドラルのボトルをあけて、ぐいぐい、喉を鳴らして飲みはじめた。  …けっこう、疲れる。足元が悪くて。たいした距離は、まだここまで歩いていないはずだけど。汗がやたらと、さっきから流れて背中のあたりが気持ち悪い。グリセルダはこっそり心の中で溜息をつきながら。バッグからパイン味のハリトスのボトルを取り出して、毒々しいくらいにイエローに輝くその甘すぎる健康に悪そうな液体を、ちびちび、舌から喉へと流し込む。  まあでも。スマホの地図が実際正確だとすれば。ここからこの、太陽の照り返しで白く光っているコンクリート舗装の農道を、まっすぐずっと、3キロくらい東に歩けば。だいたい、その―― ホセマリアが言うところの「虹の根」の丘の、そのふもとくらいの場所には出られるはずだった。 「なんだろう、あれ? 教会、かな…?」  イサベラが、日差しの下でまぶしそうに、車もバイクも一台も走ってこない、白い農道の先の一点を見つめた。  そこには何か―― 半円形の、ドーム型の屋根のある、何か大きな建物が見えている。距離はたぶんここから―― 五分とか。それくらい歩けば、たぶん着けそうな距離だ。 「…教会、か。あるいはあれかも。ホテルみたいな? なんかそういう、凝った造りの建物よね」  ジュリコが言って、自分の服の肩の部分で口元をぬぐい、ボトルのキャップをきっちり閉めた。 「面白そうじゃん。行って、確かめよう」ジュリコは言って、石の上から立ち上がる。「あのしけた退屈な村からそんなに遠くない距離に、いったいどんなお洒落施設が、じつはあったりしたのかを」
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