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虹の根(7)
「ねえ。やっぱりもうちょっと先まで、行ってみない…?」
誰に、ということもなく。雲間に消えた山塊があったところに目をとめて。ホセマリアが小さく言葉を投げた。
「…だね。うん。まだ、日没までには時間あるし。多少遠くに行っても、帰りは、どこかの道でコンビを拾えば。とくに、問題なく帰れるだろうし。」
グリセルダが―― こちらも特に、誰に言うということもなく。ひとりごとの延長みたいに、小さくその場でつぶやいた。
「…まだ歩こうってわけ? あんたら酔狂にもほどがあるわよ。」ジュリコが言った。「…ったく。つきあってられないわ、と。いつもだったら、言いたいところだけど」
言いたいところだけど、のその先を。ジュリコはそのまま言わなかったのだけど。でも。残りの3人にも、ジュリコの言いたいことは、言わなくてもその場でなんとなくわかった。
イサベラは… とくには言葉は言わなかったけれど。ただひとつ、うん、と。東を見ながら。丘の上の湧きたつ雲を見ながら。小さくひとりで、うなずいた。
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