おばけはちみつのグリセルダ

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村  村の名前はペドレガル。「石が多い土地」とか、そういう由来の地名らしい。たしかに掘ると、どこでも地面の下からはざくざくと青黒い石が出てくる。  ここの村の人たちは、全体にあまり裕福とは言えない。多くの家庭では、ここより山の方や、ここより下の山のふもとに小さな畑を持っていて、そこで何かを作って売っている。その作物はノパルだったり、アグアカテ(アボカド)だったり、トマトやトウモロコシだったりするけれど。畑のサイズは大きくはなく、収入もそれほどでもない。だからたいてい、村の家では副業として森のキノコやモラを売ったり、村に1つだけあるパン工房のアルバイトをしたりして、それぞれ、なんとか暮らしをたてている。  それから―― ここから先は知っても知らなくても良いことだが―― このペドレガル村は、ここよりもう少し大きいトラルネパントラという町の一部に属している。しかし飛び地というか、ペドレガルはトラルネパントラ本町からはだいぶ離れた場所にある。ここから本町に行くためには、ノパル畑と森の中を30分ほど歩いて急な坂を登らないといけない。けれどその本町も、じつは町の規模として大きくない。大きなスーパーマーケットは1つもないし、オクソ(コンビニ)も銀行もない。何か特別な買い物をするには、車かコンビ(乗り合いマイクロバス)で山を下り、隣町のトラヤカパンか、さらに遠くの町まで行かないといけない。
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