おばけはちみつのグリセルダ

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事件…? (同日)  さいしょに聞いたのは、音だ。  シュッ、という何かの音がむこうの木の方で鳴った。つづいて煙と、火薬の匂い。  シュッ! と。もういちど別の音がして、テラスの床のコンクリートの上に、何かがカツンと当たって落ちた。鼻をつく、鋭い火薬の匂いがたちこめる! 「いたぞぉ! 魔女発見!」「やっつけちゃえ、やっつけちゃえ!」  木立のむこうで、声がする。  それは幼い、ちびの、男の子たちの声だ。うっすらとした朝霧が邪魔して、顔立ちとかまで、はっきり見ることはできなかったけれど――  シュッ! シュッ!  離れたそこから、たてつづけに撃ってくる。  ロケット花火。さいわい、大きくはじける危険な種類ではないようだけど――  またひとつ、炎をあげて花火のひとつが、グリセルダの足元に落ちて煙をあげた。 「…ちょっと! 危ないじゃない! やめなさい、あなたたち――」  立ち上がってグリセルダが言いかけたそのとき――
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