5人が本棚に入れています
本棚に追加
事件…? (同日)
さいしょに聞いたのは、音だ。
シュッ、という何かの音がむこうの木の方で鳴った。つづいて煙と、火薬の匂い。
シュッ! と。もういちど別の音がして、テラスの床のコンクリートの上に、何かがカツンと当たって落ちた。鼻をつく、鋭い火薬の匂いがたちこめる!
「いたぞぉ! 魔女発見!」「やっつけちゃえ、やっつけちゃえ!」
木立のむこうで、声がする。
それは幼い、ちびの、男の子たちの声だ。うっすらとした朝霧が邪魔して、顔立ちとかまで、はっきり見ることはできなかったけれど――
シュッ! シュッ!
離れたそこから、たてつづけに撃ってくる。
ロケット花火。さいわい、大きくはじける危険な種類ではないようだけど――
またひとつ、炎をあげて花火のひとつが、グリセルダの足元に落ちて煙をあげた。
「…ちょっと! 危ないじゃない! やめなさい、あなたたち――」
立ち上がってグリセルダが言いかけたそのとき――
最初のコメントを投稿しよう!