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「こおおおらああ!!! やめろやめろおまえたち!」
また別の声が、夜明けの森の木々の間に響きわたった。
「人にむけて、花火撃つな! すぐやめないと―― 警察の人に、言いつけてやる!」
誰かが向こうから駆けてくる。朝霧を割って、その―― 遠くから撃ってくる子供たちに向かって全速力でかけていき――
わああああっ、と悲鳴をあげて。男の子たちが散っていく。二人、三人、四人。小さな子たちだ。グリセルダ自身より、いくつも年がずっと下の村の悪ガキたち――
「…大丈夫? けが、なかった?」
はあ、はあ、と。息を切らせてて駆け戻ってきたのは、グリセルダの知らない、村の少年だ。歳はおそらく―― 10歳とか、それくらいだろうか。背丈は、グリセルダ自身よりもだいぶ低くて。ぱっちりとした大きな黒い目が、心配そうにこっちを見ている。
「…けがとか、ないわ。まあでも―― ありがと。助けようとしてくれて」
グリセルダが片手をしずかにさしだす―― いちおう、感謝のしるしに握手をもとめる動作だったのだけど―― 相手の男の子は少し頬を赤くして、視線をそらし、それからとても控え目にグリセルダの右手を握り返した。
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