その名は凶星、あるいは吉祥

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「え? いや、そんな大したものじゃ」 「大したものだ、私にとっては。お前に出逢い、名を与えられ、荒んだ心を救われた。生涯、大切にすると誓おう」  葛葉はそう告げて、小さく笑う。参梧はその顔を直視できずに、視線を泳がせた。嬉しいやら恥ずかしいやら悲しいやら、あまりに複雑な心境だ。  ――おれもあんたのこと、忘れない。どちらの名前も胸に留めておく。毎晩、あんたの無事をあんたの星に祈るよ。  そう言いたいけれど、葛葉のようにさり気なくすらすらとは言えない気がした。きっと心情が透けてしまう。この恋慕わしい想いを、知られてしまう。口を噤むことにした参梧に、ずいっと葛葉が顔を近づけてきた。その息巻くような剣呑さに面食らう。 「な、なに?」 「……不快であれば、全力で拒め」  言うが早いか――その冷たい手に顎をとられ、そっと唇を重ねられていた。 「ん、んんっ……⁉」  浅く閉ざした唇を何度も啄むように解された。その狭間を舌先で小突かれ、訳も分からぬままにその熱い舌を受け入れる。 「ぁっ……ふ……」  頬の内側を舐めまわした舌が口蓋をくすぐり、内部を余すことなく蹂躙した。粘膜と粘膜がこすれ合うと、疼くような心地よさが下腹部へ集いゆく。  その快感に溺れているうちに、いつしか腰をきつく抱かれ、上から覆いかぶさるようにして咥内を貪られていた。息も絶え絶えになりながら、その袖と肩に縋りついて必死に応える。嫌なわけがなかった。  舌を絡ませたまま、葛葉が自重をかけてゆっくりと参梧をその場に押し倒す。その左手は性急に帯を解きにかかり、下肢へと伸ばされた。
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