その名は凶星、あるいは吉祥

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「ん、う……は、ぁっ、はぁっ……葛葉、いつも唐突すぎるって……」 「……すまない、性根が獣ゆえ……こんなにも愛くるしいお前に応じてもらえたと思うたら、もう辛抱ならぬ」 「……あいくる……へ……?」  当惑する参梧に、葛葉は苦笑を滲ませて、その頬に、額に、鼻筋に、いくつも口づけを落とした。 「あれだけ身も心も添い合わせるよう努めたというのに。私が口下手なのか、お前が鈍いのか」 「だ、だっておれだぞ? 女じゃないどころか、あんたみたいな美形でもない。おれみたいののどこに……」 「その純真すぎる心根に。……ああくそ、気ばかりせいで上手く言葉も出てこない。私はお前に心底惚れているらしい、参梧。こんなにも一人の相手を恋しいと、欲しいと思ったのは生まれてこの方初めてのこと。……そうでなければ、お前を口に含んだり、無防備な獣のままで床を共にしたり、真の名を伝えようはずもない」  睦言のように囁いた葛葉が、まるで甘える獣のように鼻先を鼻先へすり寄せてくる。 「お前を恋慕っている……参梧も、私を憎からず想うてくれているのだと思ったが。私の自惚れか?」 「そっ、そんなことない! おれもずっと、あんたのこと、好きで……そうか、はは、気づかれてたか……」 「そうでもない、誰に対してもあけすけなだけなのかと、随分悩まされた」  葛葉は眩しげにうっとりと笑みを浮かべ、再び唇を塞いでくる。 「よかった……お前は本当に愛い、私の参梧」
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