その名は凶星、あるいは吉祥

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 二本に増やされた指が、生々しい音を立てて中をかき乱す。不快感はほとんど消え失せ、指が動いて粘膜をひっ掻くたびに悶えるような心地よさが生じた。特に内側の一点を責められると、たまらず腰が跳ねてしまう。一度も触れていない前はすっかり勃ち上がり、はしたなくとろとろと先走りを零しながら震えていた。 「腰が揺れているな、そんなに美味いか、私の指は。今でさえこれなのに、ここに私のものをいれたらどうなってしまうだろうな?」 「う、うるさい、すけべ狐! このっ、……ぁあっ! んっ、あ、ぁぁっ!」  一際敏感な勘所をぐりぐりと責め立てられ、軽く達したような鋭い快感に下肢ががくついてしまう。責め苦をどうにかやり過ごそうと畳に爪を立てると、背後で小さく舌を打つのが聞こえた。 「……少し、痛むかもしれないが、そのまま耐えてくれ……」 「っ、え、ぁ、あぁっ――――!」  反り返った剛直が解されたところへ宛がわれたかと思うと、息をする間もなく突き立てられた。みっしりと熱が内側を埋めてゆく圧迫感は、すぐにえもいわれぬ多幸感へ塗り替えられていく。想い人と体を重ね、求められ、繋がることがこれほどまでに心地よいなどと考えたこともなかった。 「っ、く、はは……平気か」 「う、ん……」  じわじわと最奥まで楔を打ち込むと、葛葉は満足げに大きく息をついて喉の奥で笑った。
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