若旦那は恋ひしき神使と番う

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 その可憐な野花がほころんだような笑顔と素直すぎる物言いに、葛葉もまた、思わずにやけるのを必死にこらえていた。 「じゃあ、その、これからもよろしくな、葛葉」 「……ああ、こちらこそ」  かなわないな、と葛葉が苦笑した。参梧はどこか間抜け面で内心首を傾げる。それがいっそう愛おしいのだと、この鈍感な情人にどうすれば伝わるのか、葛葉はしばらくの間頭をなやませることとなる。 「よく頑張った、参梧。そして、私の進むべき道を示してくれてありがとう。これから先もずっと、伍敷屋に、お前に幸の多からんことを」  その額に口づけを落とし、これからの幸福と、この町の平穏を祈る。  妙なる神使の言祝ぎに、参梧はひとり、永劫の幸福を確信した。  その後――再興を果たした繕布里には名君が絶えず、天候と土壌にも恵まれ、天下に名を轟かせる都となった。  菓子司と神狐の子が後の世を守り、元妖狐は主君の帰りを待ち続けることとなるのは、また別のおはなし。
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