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 左右田と俺は、高校一年から同じクラスだった。お互い経験者で一緒にサッカー部に入り、たぶん三年間で一番長い時間を共にした相手。部活のない休日もゲームしたり出かけたり、あんまりずっと隣にいすぎたせいで、俺とやつの距離感はおかしくなってしまった。  左右田が他の誰かと遊びに行くとムッとして。他校の女子からチョコレートをもらってたらイラッとして。誕生日やクリスマスを二人で過ごしたいとか、卒業しても一緒にいたいとか、俺はだんだんそんなふうに考えるようになってしまった。  普通じゃないってことはわかってた。だけど別にその時点では、俺はそんなに悩んだりしてなかったんだ。左右田も俺と同じ気持ちでいると、思い込んでいたから。 「俺さ、東京の大学に行こうと思ってるんだ」  そう打ち明けたのは、高三の秋。左右田は理由も聞かず無表情のまま、「そうか」と言った。「じゃあ、こうしていられるのもあと半年足らずだな」と。  頭から冷水を浴びせられた気がした。足元に敷き詰められたイチョウの黄色が、全部ぼやけてまだらになって。 「やべ、コンタクトずれた」  俺はあの日にごまかした気持ちの擦れを胸の奥底に隠したまま、精いっぱいの意地を張り。卒業までの日々、「左右田の親友」の地位を死守して笑って過ごしたのだった。  そんなことがあってから、五ヶ月。なぜか今、俺は東京のアパートの部屋で、侍姿の左右田と向かい合って畳に座っている。
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