1 妖怪、オバケ、宇宙人って信じる?

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「ここを曲がって……郵便局の前をまっすぐ」  帰り道。先生にもらった地図を片手に、七星くんの家をめざしていた。  いつもの大通りから横道に入って、山の方へぐんぐん歩く。  へー。こんな道、あったんだ。  普段は素通りしちゃう狭い道。  野良猫がにゃあって鳴いて、古びたポストのかげから出てきた。  小さな神社があったり、昔ながらの散髪屋さんがあったり。  ちょっと町探検みたいで、ワクワクする。  しばらく歩くと、瓦屋根が素敵な和風のお家が見えてきた。  地図を見たら、ちょうど赤い丸がしてあるところ。  ここが七星くんのお家かな?  表札を見ると、「里村」って書いてある。  当たり! 七星くんの名字だ!  ピンポーン  インターホンを押してみる。  だけど、玄関はしんとしたまま。家の中から音もしない。 「……いないのかな」  ピンポーン……ピンポーン。  何回か鳴らすけど、物音一つしない。  出ないなぁ。  もしかしたら病院へ行ってるのかも。  それともお家の人が仕事で、七星くんは寝てるとか?  封筒、郵便受けに入れておけばいいかな。  せっかく来たから、七星くんの顔見たかったけど……  郵便受けのふたを開けた時、家の裏側からバタバタ走ってくる音が聞こえてきた。 「はーい。すみませんっ、出るのが遅くなって……って、苺ちゃん?」  走ってきたのは、青のエプロンをした七星くん。  七星くんは、びっくりした顔で私を見つめたかと思ったら、ゲホッと咳をしてその場に座り込んでしまった。 「七星くん、大丈夫?」  しゃがみこんで、七星くんの背中をさする。 「う……うん。だいじょ……ゲホッゲホゲホ」  むせる七星くんは、ちょっと顔色が悪い。  咳がおさまって落ち着いたところで、手提げ袋から封筒を出した。 「あの、これ先生から。宿題とかプリント入ってるって」 「あ、ありがと……」  七星くんは封筒を受け取ると、またケホッと咳をした。 「体調大丈夫?」 「……うん」  七星くんはなんだか難しい顔でうなずいた。 うーん。まだしんどそうだなぁ。長居したら迷惑だよね。 「無理しないでね。じゃ……」  立ち上がって、帰ろうとしたら……  ガシッ!  急に手首をつかまれた。  振り返ると、七星くんがうつむきながらゆっくり立ち上がった。 「あ、あのさっ」  七星くんは何かを言いかけたけど、ハッとしたように私をつかんでいた手を離した。  それからしばらく沈黙。私は七星くんの顔をのぞきこんだ。 「七星くん?」  どうしたんだろ?   宿題、分からないところがあるのかな?   それとも、先生に伝えてほしいことがあるとか? 「七星く……」  言いかけた時、七星くんが何かを決心したようにまっすぐに私を見た。 「苺ちゃんはさ……その、う、宇宙人って信じる?」
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