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「いつもはこの三人しかいないんだけど、最近、鬼の赤ちゃんを預かることになってさ。しかも、双子」
「双子? 鬼?」
「うん。あっちで寝てる。さっきの騒ぎでも起きないのがすごいよね」
七星くんが指さす方を見ると、部屋の隅にベビーベッドがあった。
ベッドの柵の間から赤と青の小さな足が見える。
そーっとベッドに近寄ってみると、赤鬼と青鬼の赤ちゃんが二人そろってすやすや眠ってた。
ぷっくりしたおなかが上下に動いてる。
赤鬼ちゃんはツノが一本、青鬼ちゃんはツノが二本。
鬼って言っても、こんなに小さいとすっごくかわいい。
七星くんが私のとなりに来て、深いため息をついた。
「この双子を預かってすぐ、ちょうど父さんと母さんが風邪で体調崩しちゃって……ぼく、一人でこの子たちを見ないといけなくてさ。もうてんてこまいだよ」
一人で? この子たちを?
……それは大変だ!
「……もしかしてそれで休んでたの?」
「うん。父さんたち、本格的に寝込んじゃってさ。ここ二日ほど、ぼく一人でこの子たちをみてて……ちょっと限界」
カクンと七星くんが頭を垂れた。
「……た、大変だったね~~」
私の声に、びくっと赤鬼ちゃんの体が動いた。
あわわ。せっかく気持ちよさそうに寝てるのに、起きちゃう。
双子ちゃんを起こさないようにベッドを離れて、また小さなテーブルの前に座った。
ミケトくんたちは、ブロックのおもちゃを出して遊び始めてる。
あらためて思うけど、この三人と鬼の双子ちゃん。
この子たちを一人でみるって絶対大変だ。
だって、うちの弟や妹みるだけでも疲れるんだよ?
そりゃ、七星くん疲れちゃうよ。
考えるだけで私も疲れちゃって天井を仰いでると、七星くんが気をつかったようにきいてきた。
「あの……苺ちゃん、びっくりしてない? オバケとか妖怪とか……こわくない?」
「う、うん。大丈夫だよ……」
そうは言ったものの。
妖怪とか宇宙人とか……まだ信じられない。
でも、いきなり吹雪が吹いてきたり、物が浮かんでたのを見てしまったし。
うん。一応確認しておこう。夢か現実か。
ほっぺをぐいーーっと引っ張る。
……痛い。
やっぱり現実なんだ。
なにより七星くんがウソつくなんて思えないし。
引っ張ったほっぺをさする私を見て、七星くんは目をパチパチさせた。
「そうだよね……やっぱり信じられないよね」
七星くんは頭をがりがりっとかいて、うつむいた。
それから、少し考え込んだように黙ったあと、ピンと姿勢を正して真っすぐ私を見た。
「それで、さ。……苺ちゃん、無理なお願いって分かってるんだけど……」
「うん。なに?」
「この子たちみるの、手伝ってくれないかな? 父さんたちが復活するまででいいんだ。少しだけでも手伝ってくれれば助かるんだけど」
弱々しい声で七星くんが言う。
電気の光でくっきり見える七星くんの目の下のクマ。
普段は少し日に焼けた元気な顔色なのに、オバケみたいに青白い。
いつも元気な七星くんがしんどそうなのは、私もいやだ。
手伝ってあげたい。だけど。
「あの……私、保育士さんとかじゃないよ? ただの小学生で資格なんか持ってないし」
普段、家で弟たちの面倒はみてるけど、それは家族だからだし……
あれ? でも七星くんは資格とか持ってるの?
そんなわけないよね。小学生だし……
むむっと考えてると、七星くんがちょっと表情をやわらかくした。
「あぁ、それは大丈夫なんだ。人間の世界とちがうから。妖怪、オバケ、宇宙人、各界では『異界の者を認め、子どもを愛せる者なら保育の仕事をしても良い』ってなってるんだよ」
「へぇ。そうなんだ」
なんか難しい言葉でよく分かんないけど……
とりあえず、妖怪やオバケの世界では、私や七星くんがこの子たちをみてもOKなんだ。
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