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「……私、できるかな」
小さい子をみるのは、慣れてるから自信あるけど、妖怪や宇宙人の子をみるなんてできるのかな?
また吹雪とか出されたら、雪だるまになっちゃうよ。
物をプカプカ浮かされたら、虫取り網持ってこないと届かないし。
私の心配が伝わったのか、七星くんがちらっとミケトくんたちを見て、私に視線を戻す。
「一応、今日みたいな吹雪や物を浮かせるっていう異能力は、普段は使っちゃダメって言い聞かせてるから、この子たちが頻繁に使うことはないよ。今日は……その、ぼくもバタバタしてて、この子たちも好き勝手しちゃってたから。もし使ったらぼくがちゃんと叱るし」
「うーん。でも……」
異能力かぁ。ちょっとこわい気もするよね。
迷ってると七星くんの右手が伸びてきて、カップを持つ私の手を上から包み込んだ。
「ぼく、苺ちゃんだからお願いしたんだ」
「え」
「苺ちゃんのこと、いつも見てて知ってる。苺ちゃんなら信頼できるって」
ぎゅうっと七星くんの手に力がこもった。
私を見つめるまっすぐな瞳にどきんと心臓が鳴る。
――信頼。
うれしいな。七星くんにそう思ってもらえてるなんて。
クラスメイトとして、となりの席の友達として、ちゃんと認めてもらえてる気がする。
うん。七星くんがいるなら、私、大丈夫かな。
それに友達のお願いなら、やっぱりきいてあげたい。
七星くんが困ってるなら助けてあげたい。
よしっ!
「私で良かったら……七星くんの力になるよ」
「……よかったぁ。ありがとう! 苺ちゃん!」
くしゃっと笑顔をうかべる七星くん。
うわぁ。七星くん、こんな笑い方もするんだ。
学校では見たことない、かわいい笑顔。
いつも教室ではキリッとした顔の方が多いから、なんだかレアな七星くんを見た気がする。
しばらく七星くんにぼーっとしてたら、
ビュオオオオオオッ!
突然の視界不良!
バシャアッ!
急に雪のカタマリが飛んできて、前が見えなくなった。
「こらっ、マユキ! どうして吹雪を出すんだ! あああっ。ごめんねっ、苺ちゃん。さっき異能力は頻繁に使わないって言ったばかりなのに」
「あ、あはは。大丈夫。夏だったら冷房いらないね……」
顔にはりついた雪のカタマリを取って、苦笑い。
あのー。異能力、早速発動してますけど……
……これから不安だ。
七星くんは「こらっ」って言いながら、マユキちゃんの手を取る。
そんなマユキちゃんの視線の先は……私。
ギギギギッ。
マユキちゃんがすっごい顔で憎々し気に私をにらんでる。
あれ? 私、なんかしたっけ?
いや、どっちかって言ったら、されてる側なんだけど。
「ぴぎゃあっ……」
突然、ベビーベッドから声がきこえてきた。
もしかして、今のさわぎで鬼の双子ちゃんが起きちゃった?
「あ、起きたね」
七星くんがベッドにかけより、赤鬼ちゃんを抱っこした。
「よしよし。まだ寝てていいよ」
七星くんの優しい声に、赤鬼ちゃんの泣き声がぴたっと止まる。
うわ。すごい七星くん。赤鬼ちゃんのパパみたい。
「ぴぎゃあっ、ぴぎゃあっ」
まだ寝かせられたままの青鬼ちゃんは手足をバタバタさせて、泣いてる。
「私、青鬼ちゃんを抱っこしようか?」
「うん。お願い」
泣いてる青鬼ちゃんに手を伸ばして、そっと抱っこする。
腕の中の青鬼ちゃんはあったかい。
ふんわり優しい赤ちゃんのにおいがする。
「泣かなくて大丈夫だよ。まだ眠いよね」
抱っこして一定のリズムでトントンしてやると、青鬼ちゃんのまぶたがとろんとし始めた。
かわいい。
手も足も小っちゃい。指なんてミニチュアみたいに小さすぎる!
なつかしいなぁ。
ちょっと前まで四朗をこうやって抱っこしてたなぁ。
弟の四朗はまだまだ小さいって思ってたけど、今じゃ家中歩きまわって、壁紙破ったり、ドアを蹴飛ばしたりやりたい放題。いや~。大きくなったもんだ。
しばらく私たちが鬼の双子ちゃんを抱っこしている間、ミケトくんとセナくんは積み木遊びを始めた。
その横で、マユキちゃんがこっちをジロジロ見ながらお絵かきしてる。
……うーん。
なんかさっきからマユキちゃんの視線が痛いんですけど。
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