3 ひみつの保育園

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「……私、できるかな」  小さい子をみるのは、慣れてるから自信あるけど、妖怪や宇宙人の子をみるなんてできるのかな?  また吹雪とか出されたら、雪だるまになっちゃうよ。  物をプカプカ浮かされたら、虫取り網持ってこないと届かないし。  私の心配が伝わったのか、七星くんがちらっとミケトくんたちを見て、私に視線を戻す。 「一応、今日みたいな吹雪や物を浮かせるっていう異能力は、普段は使っちゃダメって言い聞かせてるから、この子たちが頻繁に使うことはないよ。今日は……その、ぼくもバタバタしてて、この子たちも好き勝手しちゃってたから。もし使ったらぼくがちゃんと叱るし」 「うーん。でも……」  異能力かぁ。ちょっとこわい気もするよね。  迷ってると七星くんの右手が伸びてきて、カップを持つ私の手を上から包み込んだ。 「ぼく、苺ちゃんだからお願いしたんだ」 「え」 「苺ちゃんのこと、いつも見てて知ってる。苺ちゃんなら信頼できるって」  ぎゅうっと七星くんの手に力がこもった。  私を見つめるまっすぐな瞳にどきんと心臓が鳴る。  ――信頼。  うれしいな。七星くんにそう思ってもらえてるなんて。  クラスメイトとして、となりの席の友達として、ちゃんと認めてもらえてる気がする。  うん。七星くんがいるなら、私、大丈夫かな。  それに友達のお願いなら、やっぱりきいてあげたい。  七星くんが困ってるなら助けてあげたい。  よしっ! 「私で良かったら……七星くんの力になるよ」 「……よかったぁ。ありがとう! 苺ちゃん!」  くしゃっと笑顔をうかべる七星くん。  うわぁ。七星くん、こんな笑い方もするんだ。  学校では見たことない、かわいい笑顔。  いつも教室ではキリッとした顔の方が多いから、なんだかレアな七星くんを見た気がする。  しばらく七星くんにぼーっとしてたら、  ビュオオオオオオッ!  突然の視界不良!  バシャアッ!  急に雪のカタマリが飛んできて、前が見えなくなった。 「こらっ、マユキ! どうして吹雪を出すんだ! あああっ。ごめんねっ、苺ちゃん。さっき異能力は頻繁に使わないって言ったばかりなのに」 「あ、あはは。大丈夫。夏だったら冷房いらないね……」  顔にはりついた雪のカタマリを取って、苦笑い。  あのー。異能力、早速発動してますけど……  ……これから不安だ。  七星くんは「こらっ」って言いながら、マユキちゃんの手を取る。  そんなマユキちゃんの視線の先は……私。  ギギギギッ。  マユキちゃんがすっごい顔で憎々し気に私をにらんでる。  あれ? 私、なんかしたっけ?  いや、どっちかって言ったら、されてる側なんだけど。 「ぴぎゃあっ……」  突然、ベビーベッドから声がきこえてきた。  もしかして、今のさわぎで鬼の双子ちゃんが起きちゃった? 「あ、起きたね」  七星くんがベッドにかけより、赤鬼ちゃんを抱っこした。 「よしよし。まだ寝てていいよ」  七星くんの優しい声に、赤鬼ちゃんの泣き声がぴたっと止まる。  うわ。すごい七星くん。赤鬼ちゃんのパパみたい。 「ぴぎゃあっ、ぴぎゃあっ」  まだ寝かせられたままの青鬼ちゃんは手足をバタバタさせて、泣いてる。 「私、青鬼ちゃんを抱っこしようか?」 「うん。お願い」  泣いてる青鬼ちゃんに手を伸ばして、そっと抱っこする。  腕の中の青鬼ちゃんはあったかい。  ふんわり優しい赤ちゃんのにおいがする。 「泣かなくて大丈夫だよ。まだ眠いよね」  抱っこして一定のリズムでトントンしてやると、青鬼ちゃんのまぶたがとろんとし始めた。  かわいい。  手も足も小っちゃい。指なんてミニチュアみたいに小さすぎる!  なつかしいなぁ。  ちょっと前まで四朗をこうやって抱っこしてたなぁ。  弟の四朗はまだまだ小さいって思ってたけど、今じゃ家中歩きまわって、壁紙破ったり、ドアを蹴飛ばしたりやりたい放題。いや~。大きくなったもんだ。 しばらく私たちが鬼の双子ちゃんを抱っこしている間、ミケトくんとセナくんは積み木遊びを始めた。 その横で、マユキちゃんがこっちをジロジロ見ながらお絵かきしてる。 ……うーん。 なんかさっきからマユキちゃんの視線が痛いんですけど。
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