2人が本棚に入れています
本棚に追加
1 妖怪、オバケ、宇宙人って信じる?
手足は十六本、ふにゃふにゃの頭にたれ目。耳は大きくて……
サラサラッと自由帳に色鉛筆を走らせる。
うーん。でも、うまくいかないなぁ。
「わ~! なにそれ? オバケ?」
クラスメイトのゆずちゃんが、ひょいっとのぞき込んできた。
「これはね、妖怪。きのう、弟に妖怪の絵描いてって言われたんだけど、うまく書けなくて。練習中なんだ」
「弟って銀次くん?」
「いや、四朗の方。描けないって断ったらすねちゃって。今日学校から帰ったら宇宙人とオバケも描くからって言ったら、やっとゴキゲンなおったんだけど」
「それで、こんなに図書室から本を借りてきたわけか~」
ゆずちゃんが机に山積みの本を一冊手に取った。
未知の宇宙人、妖怪のすべて、化け物大特集……
表紙を見て、ゆずちゃんがふふっと笑う。
「苺ちゃん、妖怪とか宇宙人にハマったのかと思った」
「ん~。ま、嫌いじゃないよ。宇宙人にも会ってみたいし、オバケとも友達になりたいし」
「あははっ。苺ちゃんらしいねっ。でも大変だね~。きょうだいの相手も」
「……まぁね」
私、夏宮苺は四人きょうだいの一番上。
弟二人と妹一人がいるんだけど、毎日うるさくって。
家に帰ったら弟、妹が大暴れしてるから、落ち着いて宿題するヒマもない。
「絵本読んで~」「おんぶして~」「おもちゃ、こわれちゃった!」「おなかすいた!」
四六時中、弟や妹が周りをうろちょろしてる。
きょうだいは大好きで一緒に遊ぶのも楽しいんだけど……。
やっぱり小学五年生ともなると勉強も難しくなるし、委員会やクラブもあって忙しいんだよね。
ちょっとゆっくりしたいなぁなんて思っても、家では絶対ムリ。
そのせいか、なんだか毎日の疲れが取れない。
小学生にして、こんなに疲れてるのは私くらい……と思ったら。
「はぁぁぁぁ……」
となりから盛大なため息が聞こえてきた!
見ると、となりの席の里村七星くんがぐったりと机に突っ伏してる。
あれ? なんか、私より疲れてない?
月曜の朝、会社に向かうお父さんみたいなため息だよ?
いつもは元気な七星くんなのに、どうしたんだろ?
「七星くん、元気ないね。大丈夫?」
声をかけると、七星くんが少しだけ顔をあげた。
「うん……へーき、へーき」
平気って言うわりには、顔も青白いし目の下にクマがある。
全然平気じゃないでしょ? 七星くん。
「体調悪かったら、保健室行く?」
ゆずちゃんがきくと、七星くんは首を横に振った。
「大丈夫。元気だから」
七星くんはボソリと言うと、また腕の中に顔をうずめてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!