追憶

3/6
前へ
/199ページ
次へ
「それで、何の話なんだ? ……まあ、一つしかないだろうけど」  金網フェンスの前で、檜皮色の髪を靡かせ尋ねる日坂(ひさか)君。こういう何の変哲もない様子ですら絵になるのだから、ほんとに凄いなあと思う。  ……おっと、感心してる場合じゃない。勇んで来たは良いものの、果たしてどう切り出すべきか―― 「……俺さ、昔は全然喋れなかったんだよ。お前みたいに」 「……へ?」  すると、僕の逡巡を察してくれたのか、日坂君の方から話を切り出してくれた。もちろん、それは本当に助かるのだけど……だけど、それはそれとして……今しがたの発言は、中々に衝撃で―― 「……だけど、ある出来事をきっかけに俺は変われた。――夏乃(かの)のお陰で、俺は変われたんだ」  
/199ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加