声にならない想いを乗せて（第１章）

それでも、僕は……

「…………は？」

　僕の唐突な申し出に、ポカンと口を開け呆然とした様子の日坂(ひさか)君。……まあ、そうなるよね。そもそも、僕なんかに応援されたところで、これといって彼にメリットなんてないだろうし。

　……それでも、応援(そう)したいと思った。もちろん、これがとんだ矛盾だということは、僕自身重々理解しているつもりだ。どころか、彼女に対する裏切りだと言われても当然だと思う。郁島(いくしま)先輩への想いを叶える協力をすると言いながら……今、こうして他の誰かの彼女への想いを応援すると言っているのだから。

　だけど、一つ言い訳をさせてもらえるなら……何も僕は、彼女の……斎宮(さいみや)さんの幸せを蔑ろにしたいわけじゃない。僕は今後も彼女の恋に出来得る限り協力する所存だし、その想いが成就すれば僕は本当に嬉しくなると思う。

　それでも……彼女が幸せになる可能性は、何もそれ一つというわけでもないと思う。だって、日坂君はこんなにも――中学一年生の頃から今までずっと、こんなにも一途に彼女のことを想っている。そして、例え長いとは言えずとも交際期間があったということは、斎宮さんも少なからず彼に好意を抱いていた時期があったということ。だとしたら――再び相思相愛となり、二人ともが幸せになる未来だってきっとあると思うから。