41人が本棚に入れています
本棚に追加
――ところで、それはそれとして。
「…………なに？ さっきから、こっちじっと見て」
「……あ、いえ、その……」
不意に、右隣の席からジトッとした視線を向け問い掛ける女子生徒。……いや、不意にでもないか。僕がじっと見てたのは事実だし、そりゃ怪訝に思うよね。……というか、普通に気持ち悪いよね。
未だ何も答えられないでいる僕に対し、鋭い視線を向け続ける彼女は斎宮夏乃さん。鮮やかな栗色のボブカット、そして水晶のように透き通る瞳を宿す生徒で、クラスのみならず学年内でも評判の美少女です。
そんな彼女であるからして、やはり当クラスにおいてもトップカースト――歓談を交わしながら、今しがた教室を後にした彼ら彼女らと同じグループにいることが多い。なので、今日は一緒に行かなくていいのかなあ、なんて余計なことを考えつつ、彼女の方へと目を向けていたわけで――
「……なにもないなら、もう行くね」
「……あ、えっと……はい……」
暫し間があった後、やはり何も答えない僕に対し溜め息を吐き徐に席を立つ斎宮さん。そして、扉の辺りでこちらを一瞥した後そのまま教室を去っていった。……しまった。折角待ってくれてたのに、結局何にも答えられなくて……ほんと、ごめんなさい。
最初のコメントを投稿しよう！