星露学園

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 学園の寮は、久遠(くおん)寮、泡沫(うたかた)寮、玲瓏(れいろう)寮、待宵(まつよい)寮、そして月虹(げっこう)寮がある。  それぞれ、儚かったり、淡くゆらゆらするものだったりを表す言葉だ。初代学園長はきれいな響きの言葉が好きで、このような寮の名前にしたらしい。  沢山の寮があるのは、この先の高校、大学の学生も入るからだ。大体中学生は下の方の階にいる。私の入る寮、久遠寮の意味は、「永遠」。響きがかっこよくて、すぐに気に入ってしまった。永遠も、何かが変われば永遠ではなくなるから、儚い。  私は久遠寮の460号室。つまり、久遠寮の4階の、60番目の部屋だ。先輩たちは、〇〇寮、とは言わず、例えば久遠寮ならば、久遠、とだけで呼んでいるらしい。なかなかおしゃれである。 「新入生はそれぞれ、自分の寮の寮監の先生の元へ移動してください。繰り返します。新入生はそれぞれ、自分の寮の寮監の先生のもとへ移動してください」  メガホンを持った担当らしき先生に言われ、てきぱきと全員が動く。 「はじめまして、新入生諸君。私は、久遠寮の寮監、久岡(ひさおか)という」  久岡先生は、ピシッとしたおじいちゃんのような先生。銀縁の片眼鏡をかけて、ヨーロッパのお貴族様のような雰囲気を(かも)し出している。 「全員、二列に並びたまえ」  先生がそう言うと、全員がさっと左右に分かれて二列に並ぶ。 「お隣失礼します」  皆に習い、二列になる。横になるのは前に並んでいた女の子だ。声をかけると、女の子は目を細めてほほえみ、会釈をしてくれた。 「詳細は寮で話そう」  久岡先生は、くるりと回って、そのまま歩き始めた。私達新入生も、慌てて追いかける。 「あの……」  周りがざわざわとし始める中、私のところだけ静かなのは気まずいため、なんとなく話しかけてみる。 「お名前、聞いてもいいですか?」 「時羽(ときは)梅崎(うめざき)時羽といいます」  女の子……時羽さんは、これまたふんわりとした笑顔で返してくれた。
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