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上流階級の教育は厳しい。人目に付くところも、つかないところも。家の恥にならないように行動しなければいけない。
「まったく、散々だったよ」
眉毛の間にシワを寄せ、不満をポロポロと吐き出す。
「星露に入れば知名度が上がるーたらなんたら。努力するのは、大変な思いをするのは、プレッシャーかけられてるこっちなんだけど」
するとこちらに顔を向け、ニッコリと笑う。
「でもおかげで、凪沙にも会えたからいいんだけどね」
またもや驚いた。
「………」
私が黙りこくってしまい、少しだけ静かな時間が流れる。
「新入生諸君」
そうすると、歩きだしてから一言も喋らなかった久岡先生が、こちらに向き直り言葉を発した。
「ようこそ、『永遠』を意味する、久遠寮へ」
足を踏み入れた先は、別世界、とでも言えばいいのか。
豪華なシャンデリア。
深紅のカーペット。
きらびやかな階段。
何も知らずに入ったら、これはどこぞの高級ホテルだろうか? と思うほどの豪華さである。
「うわぁ」
思わず言葉にした私を見て、久岡先生はフッと笑う。
「部屋に入ればまた驚くことになろう」
意味深な言葉に首をかしげるが、その言葉通り、また驚くことになった。
***
「うわぁ」
私は本日二回目の言葉を発する。
部屋は、あの豪華絢爛な入口からは想像出来ないようなものだった。
大きなテレビ、柔らかそうな大きなベッド、作業がしやすいようになっているビューロー。
豪華さと便利さが見事に調和している。
「ここ……寮だよね?」
そう呟いてしまうほど、私は驚いていた。というと、少し役を演じているような気になってしまうけれど。
「すみませんけれど、私を中に入れてもらってもいいかしら?」
入り口で突っ立っていたら、後ろから声をかけられた。
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