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さかのぼること約5分前、雫は、お母さんや姉の渚、御蔵神社の神主さん巫女さんなどたくさんの人に見守られていた。
これから儀式が行われようとしていたのだ。
雫は今日のためにお母さんに買ってもらったエメラルドグリーンの袴を履き、御蔵神社の本堂の真ん中に立っていた。
壁に沿って色んな人に見られている。
(恥ずかしい……)
神主さんから指示を受け目をつむった。
両手で色紙をしっかり持ち、頭の中に御蔵神社浮かべる。
そこから出てくる煙のようなものが自分の脳に直接入ってくる想像をする。
その煙は脳から手に渡って色紙にたどり着く。
そうして色紙に文字がじわじわ浮かんでくるはずだった。
神主さんからの合図があるまでこの想像をひたすらする。
途中で雑念が見え隠れしだすのを追い払って集中した。
人生でこんなに集中したのは8月31日の夏休みの宿題消化くらいだ。
「止め」
神主さんの合図がありゆっくり目を開ける。
そして冒頭に戻るというわけだ。
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