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「はい、えっと5年2組の……」
誰も手が上がるとは思わなかったのか、名前を確認するため委員長が名簿表を見た。
「鯉口です。キナについての意見なのですが」
雫は立ち上がり、声を震わせながら全員分の視線を集めていた。
「キナのお別れ会みたいなものを開くのはどうでしょうか。みんなキナがいなくなってから元気がないように思えますし、最後にお別れしてから次に進むのが良いかなと思うのですが」
教室中ざわざわし始めた。
(全部言えた……!でもどうなるの、みんなどう思っているの)
なぜだか座れずに立ち尽くす中、ノートを書いていた書記の男の子がスッと手を挙げた。
教室は静かになった。
「それなら献花台を設置するのはどうだろうか。どっかの教室を1週間くらい借りて、並べた机に白い布をかぶせてさ。
みんな好きな時間にキナにお別れを言いに来れるし。鯉口さんの思っているのとは少し違っちゃうか」
「それ、すごく良いです。お別れ会だと来れない人も出てくるかと思っていて、そこがどうにかできればと思っていたんですけど。それならみんなが参加できますね」
雫は先ほどの震えなど忘れて声に出していた。
「キナの写真なら、新聞委員会が前撮ってたからそれ使わせてもらおうよ」
「布なら家庭科室にいらないのいっぱいあったよね」
「花は折り紙で作ったのとかでも良さそう」
そう言った声が聞こえてきて、とんとん拍子に進み、献花台は早速明日の放課後から設置されることになった。
(言ってみて良かった)
雫はまた自分が少し成長できた気がした。
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