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殻を破れた金曜日
次の日の放課後、雫は献花台が設置されている多目的室をドアから覗いていた。
(来てる来てる!)
そこには5人の生徒が手作りの折り紙の花を供えているところだった。
ここには入れ代わり立ち代わりで人が入ってきていて、常に5人ほどがいる状態だった。
机を5つ並べて大きな台を作り、そこに家庭科室で貰った長くて白い布をかぶせた。
机の真ん中には出来る限り大きくしたキナの写真が置いてある。
新聞委員会の撮った写真を大きく印刷してもらったのだ。
献花は今日の放課後、ちょうど1時間前くらいから始まったが、すでに台が埋もれそうなほどの花が供えられていた。
「やっぱりみんなどうしようもない悲しみがあったんだね、いいアイディアじゃん」
声に驚き振り向くと咲羅が献花台の方を見ていた。
「私はお別れ会を提案しただけだよ。あとはみんながいろいろ出してくれてここまで立派なのができた」
「提案できたなんて勇気出したじゃん。去年の鯉口からは正直想像できない」
「うっ!それを言われるととても恥ずかしい……」
去年雫と咲羅は同じクラスだった。
必要な場面でしか話した記憶はないが、それでも咲羅は雫の受け身なところは知っていた。
「まあいいじゃん、今は変われたでしょ」
「そうだといいな」
「もう自信持ちなよ。僕のこの学校で唯一の神力者の仲間なんだから」
雫は咲羅の方を見たが咲羅はそっぽを向いていた。
「そうだね、うん。私、変われたかもしれない」
その後、雫と咲羅も献花台に行き手を合わせた。
(キナ、ゆっくり休んでね)
キナの写真の後ろの窓から温かくて優しい風吹き、雫の頬を撫でた。
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