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「暑いねぇ」
少し先を歩く夏海の後ろ姿を、陸が見つめる。
夏海と会うのも七五三以来だと聞いていた。
夏の陽に焼けた小麦色の肌。うなじも耳も露出するほど短く揃えられた黒髪。白Tシャツから伸びる艶やかな腕に、黒のショートパンツから伸びるしなやかな足。
前に会った夏海はこんな感じだったのだろうか、どうにも思い出せない。
黙って歩いていると、突然夏海が振り向いた。
「陸、静かだけど大丈夫? 暑くない?」
ぱちりと大きな夏海と目が合う。
「だ、大丈夫」
「そっか、よし」
目を細め、白い歯を見せて笑う夏海。
「それにしても大きいよね。小四ってこんなに大きかったかな」
ぽんぽんと頭を撫でられる陸。夏海の言う通り、背の順では後ろから数えた方が早い。が、夏海に言われると馬鹿にされたような気がした。なぜなら──
「夏海の方がでかいじゃん」
夏海が、陸よりも頭ひとつ背が高かったからだ。
「あはは、よく言われる。まぁ中二だし。陸より四つも年上だから」
「でも、女じゃん」
「女でも男より背が高い人はいっぱいいるよ。でも大丈夫。陸も中二になったら、私なんか追い抜いちゃうって」
言って、夏海は再び歩き出した。なおも何か言い返したかった陸だが、仕方なくあとをついていく。
長い手を大きく振り、長い足で大きく歩く姿を見ていると──なんだか無性に腹が立った。
しばらく行くと、山の麓にそびえる大きな鳥居が見えてきた。山の上には、木々に隠れた社殿も見える。
「あ、あれが神社ね。帰るのは月曜だったよね? 日曜にお祭りがあるから一緒に行こ」
指差して言う夏海に、陸は無愛想に頷いた。
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